ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.488

はしご酒(4軒目) その百と百と二十九

「セッキョクテキ ニ チカラズク」

 「積極的平和」主義と「積極的に平和を考える」主義とは、根本的なところで、天と地ほどの違いがあるんだ、と、少しばかり、怒りを漂わせつつAくん。

 そもそもAくんは、「力尽くで」、を、「積極的に」、に、置き換えた、その掟破りの豪腕ぶりに、不快感も、不信感も、抱いているようだ。

 この星に生きる人類による愚行を、いま再びココで学ぶことは、それほど難しいことではない。幸か不幸か、学ぶことができるだけの充分な量の、太古から蓄積された生々しい教材が、シッカリと用意されているからである。

 それゆえに、愛と正義と真実を希求するブレない気持ちをもってさえいれば、ほんの少し歴史を紐解くだけで、未来に向けてナニを成すべきか、自ずとわかってくるはずだ。

 にもかかわらず、全く、ナンの疑問ももつことなく、スッと口から、積極的平和主義、などという言葉を吐き出すことができるのだから、たいしたものである。

 ボンヤリと、ナンとなく聞いていると、オッ、ついに、平和に対して真剣に考え始めたな、本腰を入れたな、みたいな、そんな感じに聞こえてきたりするものだから、恐ろしくなってくるほど、たいしたものだ、と、思えてきてしまう。もちろん、誉め言葉ではない。

 するとAくん、青くクールに燃えながら、吐き捨てるようにトドメの一撃を加える。

 「積極的に力尽くで、手に入れられる平和などというものが、ホントにこの世に存在するのならば、もう、とうの昔に、この星から、この世から、暴力もテロも紛争も戦争も、全て、なくなっているはずだろ。そうは思わないかい?、違うかい?」

(つづく)