はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と六十一
「ウハウハノ ピンハネテンゴク」
あの世には、汚(ケガ)れのない、ドコまでもブラボ~な極楽浄土、天国がある、などと言われたりもしているが、その一方で、この世には、到底「善」とは言い難い、「悪」にまみれた天国もあったりするものだから、実に厄介だ、とAくん。
この世の、天国、か~。
そう言われると、たしかに、この世にも、温泉天国やらグルメ天国やら。他にも、学園天国、かりそめ天国、などという天国もあったかな。しかし、「悪」にまみれた天国となると、なかなか、思い浮かびも思い付きもしない。
「悪にまみれた天国、ですか」
「そう。正確に言えば『偽(ギ)天国』ということになるのだろうけれど」
偽天国、か~。
「その中でも、とくに今、巷を大いに賑わしているこの世の天国、偽天国が、あの、ピンハネ、ピンハネ天国」
あ~。
「必要なんてないのに、ナゼかソコにいる。ソコにいて、たいした働きをするわけでもなく、右から左へのその途中で見事なまでの中抜きピンハネ三昧。そりゃ~、ヤめられないトまらない、ピッンハネ三昧、ウッハウハ、だろうよ」
あっ、あ~。
たしか、いったん食べ始めたらもう止まらなくなるという、あの、伝説のスナック菓子のCMソングだ。間違いないと思う。
「ソレぐらい美味しい、ということですよね、そのピンハネ天国は」
「そう、美味しい美味しい。ヤめられないトまらないぐらいだからな。でも、ソレを天国と感じるのは食べている当人たちだけで、食べられている側にとっては天国でもナンでもない。だからこそ偽天国。どころか、ちょっとした地獄だな、この世の生き地獄」
なるほど、なるほどな~。
ウハウハのピンハネ天国は、その視点を変えた途端に一気に、ムカムカのピンハネ地獄に、ということか。
ナンと悍(オゾ)ましい。
(つづく)