ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.372

はしご酒(4軒目) その百と二十三

 「チチニマツワル ヒミツノベール」②

 「そんな、とにかく怖い父親だったのだけれど、なぜか、仕事帰りに、よく買ってきてくれたモノがあったんだよな~」、と、懐かしそうにAくん。

 私の頭の中の中古で旧式のコンピューターが、ピロピロピロピロとフル稼働するものの、全くもって見当もつかない。

 「それが、忘れもしない三色団子だったというわけ」

 「さ、さ、三色団子ですか」

 「そう、なぜか三色団子」

 「あの、串に刺さったピンクと白と緑色の団子ですよね」

 「そうそうそうそう、その三色団子」

 意外、を、軽く通り越して、勝手に私がつくりあげていたAくんのお父さんの極悪なイメージまでもが、ガラガラと崩れてしまいそうになる。

 「いいお父さんじゃないですか」

 「いい父親だったのかもしれないな~」

 「でも、三色団子、ひょっとしたら、食べたこと、ないかも」

 私が、何気に発したその言葉に、「三色団子にを食べたことが、な~い~!?」、と、女将さんがコチラをチラリと見てしまうほどの声で、その驚きを(ほんの少しの怒りも交えつつ)シッカリとコチラにまで伝えてくれた、Aくん。

 すかさず、救いの手を求めるようにして、女将さんに、「三色団子なんて、そうそう食べるもんじゃないですよね」、と、私。

 すると女将さんは、ニコリと微笑んで、「よく食べましたよ」、と。 

 私の起死回生の「救いの手大作戦」は、見事なまでに、瞬時にして玉砕してしまったのである。(つづく)