ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.493

はしご酒(4軒目) その百と百と三十四

「イケブクロ ノ ドライカレー」①

 なんだ?、この香り。

 Aくんが、実に美味しそうに、茄子(ナス)の煮浸しのようなものを頬張っている。

 でも、ナニかが違う。ナニやらフワッと香り立つ。

 こ、これは、カレー、カレーだ。

 「シッカリと、出汁を利かせたカレーうどんの、あの、ホッコリ感を、ほんの少しだけ、茄子の煮浸しに潜(ヒソ)ませてみたんです」、と、可愛く自慢げに話す女将さん。

 カレーか~、・・・。

 出汁の香りと相まって、さらに、女将さんが言うところのホッコリ感が増して、実にいい、いい香りだ。

 その、いい香りが、一気に私を遠い昔に連れていく。

 

 あの頃の我が家のダイニング。

 おっ、カレーライスだ。

 母親がバタバタしたときの救世主として、それなりに地位を確立していた、我が家のカレーライスの、その歴史は、かなり古く、あの、オリエンタルマースカレーで幕を開く。はじめて、チャツネなるもの存在を教えてくれた優れもので、我が家での人気も高かった。

 ソコから、羽車印度カレーやらナンやらカンやらと変遷を重ね、フォン・ド・ボーディナーカレーに行き着いたところで、我が家の即席カレーの華やかなる歴史は、その幕を閉じる。

 今はもう、即席カレーのルーは使わない。

 カレー粉に、季節の野菜のアレやらコレやらで、トロみもウマみも充分に引き出せる。とくに、夏場のゴーヤ(以前は、ニガウリなどと言ったりしていたのに、このごろは、あまり耳にしなくなったな)は、カレー粉との相性がいい。(つづく)