ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.373

はしご酒(4軒目) その百と二十四

「チチニマツワル ヒミツノベール」③

 さらに女将さん、「お花見のときに食べたのかな~」、と、ボソリ呟く。その呟きでスイッチが入ったのか、Aくん、待ってましたとばかり、お花見と三色団子についての熱き語りの幕を、力ずくで開ける。 

 「もちろん諸説はあるのだろうけれど、父親から聞いたのは、三色団子のその色が、桜の花のその移ろいを表している、ということ」

 最初は「三色団子ね~」程度であったのだけれど、なんとなく、ジワリジワリと興味がそそられてくるから不思議だ。

 「膨らんできたツボミのピンク色、満開の白、そして、葉桜の緑。まさに、お花見のために誕生したと言っても過言ではない、そんな三色団子なんだよな」

 なるほど、そういうことなら、女将さんの「お花見のときに食べたのかな~」という呟きにも頷ける。

 「この国の、移ろいゆく季節に対する、こういう、何気ないけれど充分にステキな感性、美意識、価値観、心・・・、たとえナニがあろうとも、たとえドンな時代がやってこようとも、大切にしたい、守っていきたい」、というAくんの、ササヤカながらも力強い決意表明に、もちろん、私は、清き一票を投じたい。(つづく)