先付 その壱
「アホガ アホヨブ アホアホワールド」
「アホ」が口癖だったAくんの、アホ関連ものの代表作。どこまでもライトな風情なんだけれど、その凝縮された旨味とキレ味という点で、屈指の先付と言える。
桜の木々も少しピンクがかって見える。どれどれと近づいてみると、たしかに冷凍食品のようにカッチカチだったツボミが、ほんの少し解凍し始めている。
その頃であったと思う。夜7時を少し回った頃に、いつものようにやってきたAくんは、いつも以上に「アホ」の連打、大盛り、てんこ盛り。そんな、その、大盛り、てんこ盛りトドメの一発が、この、「アホがアホ呼ぶアホアホワールド」。
私にとっては、誰がアホなのか、いかなるアホなのか、結局何人ぐらいのアホが集まってきたのか、なんてことは全くもってどうでもよくて、むしろ、アホがアホを呼ぶアホアホなワールドというAくんが身を置くその世界が、なんとなく楽しそうに思えて仕方なかったのだ。
アホがアホを呼ぶんだぞ。
呼びまくったあげくに建国までしてしまったんだぞ。
そして、その国は、いったい、どんな国なのだろう。
などと、アレコレ考えてみたりしているうちに、私は、妙にワクワクとしていたのである。(つづく)