ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.772

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十三

「ジョーカー!」①

 元々は、そんな感じじゃなかったと思う。

 なぜか、そのダークな部分ばかりが妙に強調されて映画化された『バットマン』。もちろん、賛否両論はあると思うが、それでも私は、その舞台であるゴッサム・シティの独特な描かれ方も含めて、「さすが、ティム・バートン」なのである。

 そして、ティム・バートン以上に忘れるわけにはいかないのが、その、ダークなゴッサム・シティが、必然、かのように生み落とした、宿敵、「ジョーカー」の存在。ジャック・ニコルソンヒース・レジャージャレッド・レトホアキン・フェニックス、と、くれば、どこからどう見ても「ジョーカー」あってのこその「バットマン」だろ、と、言い切りたくもなるのもまた、必然、ということだ。

 そんなジョーカーなのだけれど、もう一方の、アホがアホ呼ぶアホアホワールドに身を置く「シン・ジョーカー」も、コチラはコチラで、なかなかの存在感を発揮してくれている。

 シン・ジョーカー。

 ゴッサム・シティに勝るとも劣らない、Aくん命名の「アホがアホ呼ぶアホアホワールド」で、見事なまでに不気味に光り輝くシン・ジョーカーについて、いま一度、Aくんに問うてみたくなる。

 「以前、もう一方のジョーカーについて、尋ねたことがありましたよね」

 すると、一瞬、Aくんの瞳が、ほんの少し膨張したように見えた。(つづく)