ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1001

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と三十二

ナチュラルキラーサイボウ! ナチュラルキラーサイボウ?」

 「カッコいいネーミング、数多あれど、その中でもイチオシなのが、あの、ナチュラルキラー細胞」

 ナ、ナチュラルキラー、細胞!?

 「生粋の、純、殺し屋みたいで、カッコいいだろ」

 「つまり、混じりっ気なしの大悪党ってわけですよね」

 「と、思うだろう。ところがどっこい、殺し屋は殺し屋でも、悪いヤツは許さねぇ、って感じの、いわゆる必殺仕事人なわけよ」

 ひ、必殺、必殺仕事人、か~。

 「とはいえ、あくまでダークヒーロー。どうしても、時にはヤリ過ぎてしまうこともある。だけど、だけどだ。そんなダークな面もあるにはあるが、ガン細胞やらウイルスやらに対するあの免疫パワー、期待しないわけにはいかない」

 ダークではあっても、圧倒的な力を誇る免疫ヒーロー、だということか。

 「そんな、そのパワーがだ、ある環境の中だと更にパワーアップするらしいんだよね」

 ほ~。

 「ある環境の中で、更にパワーアップ、ですか」

 「ほら、よく、森林浴がドウのコウのって言われたりしているだろ」

 あ~。

 「森の中でマイナスイオンを浴びながらノンビリ過ごす、というヤツですよね」

 あっ。

 「ひょっとして、その環境の中って、森の中のことですか」

 「そう。森林浴には申し訳ないが、あんなもの、ただ単に気持ちいいだけだろ、と、ちょっとバカにしていたのだけれど、実は、そうじゃなかった、ってこと」

 森の中で、更にパワーアップ、か~。

 「しかも、しかもだ。その人の話によれば、街中をいくら散歩しても増えることのないナチュラルキラー細胞が、なんと、わずか30分ほどの森林浴だけでも体内でブワ~ッと増えるというから、驚きなわけよ」

 なんとなくリラックスする。気持ちがいい。そんなナニ気ない気持ちの良さが、ナチュラルキラー細胞にエナジーを供給する、ということなのか。

 「より豊かで便利な生活を夢見て、大都会をつくり上げてきた人間たちですが、結局は、無理があるのかもしれませんね」

 するとAくん、ホンの少しだけグラスに残っていた桃のヴァイツェンを、グビッと呑み干したあと、ユルリと、「そもそも、人間という生きモノが、コンクリートジャングルみたいな環境の中で生きていくコト自体、ハイリスクなんだろうな、きっと。そんな気がするよ」、と。

(つづく)

 

 

 

 

追記

 その地域の未来を、あまり深く考えることもなく、その時だけの、その場しのぎの、そんな利権やら私利私欲やらだけで開発され、自然が破壊され、歪められていく姿を、時折、目にするにつけ、胃の辺りがキリキリと痛む。