ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1151

はしご酒(Aのアトリエ) その五百と八十二

ショック・ドクトリンショック・ドクトリン?」

 「タイヘンだ。緊急事態だ。超法規的処置だ。この際、ドサクサに紛れて、ヤレるコトはナンでもヤッちまえ~」

 えっ!?

 「と、いうか、ドチラかというと、むしろ、トンでもないコトをヤッちまいたいがために、とりあえず、タイヘンだ。緊急事態だ。超法規的処置だ。などと、不安を煽(アオ)るだけ煽って、じゃ、仕方ないかな。ソレも必要かな。って、ピーポーたちに思わせてしまおうぜ、みたいな」

 ええっ!?

 「ソレが、噂(ウワサ)の『ショック・ドクトリン』だ」

 ショ、ショック・ドクトリン

 たしかに、ショッキングといえばショッキングなオープニングではあるけれど。

 「理詰めで固められたドクトリン、つまり、原則やら教義やら信念やらといったモノに、トビッキリの不安感をブチかまして、グラつかせ、場合によっては、ヘシ折る。オキテ破りの、まさに、邪道」

 「それが、噂の、ショック・ドクトリンなわけですか」

 「そう。たとえば、ミサイルが発射された、敵基地攻撃能力だ。隣国の有事は我が国の有事、防衛費2倍。え~い、面倒だ、この際、憲法9条なんて取っ払っちまえ~。みたいな、乱暴に言ってしまえばそんな感じだ。ホントのところは、トンでもない戦闘機を、ただ、無理やり、バカみたいに大量に、買わされるだけなんだけどな」

 「そのために不安を煽る、と、いうことですか」

 「そう。無理やり買わされる、なんて、口が避けても言えんだろ」

 「言えないでしょうね、そんな情けないコト」

 「ソレが、噂の」

 「ショック・ドクトリン、ですね」

 「そういうことだ」

 そのショック・ドクトリン、結構、そこかしこにあるような気がする。

 台風がパワーアップしている。暴風によって木が倒れたら危ない。街路樹を切り倒せ。

 国際的ビッグイベントが間に合わない。突貫工事が可能になるように時間外労働の上限を撤廃しろ。

 紛争だ。戦争だ。原油高騰だ。原発再稼働だ。

 おそらく、これらのやり口も、Aくんが言うところの、その、ショック・ドクトリンというヤツなのだろう。

 私たちは、よほどシッカリしていないと、次から次へと繰り出される、そうしたその手の姑息でダークなやり口に、翻弄され、振り回され、挙げ句の果てには、真っ当なドクトリンを見失い、取り返しがつかないトンでもない過ちを、犯してしまうかもしれない。(つづく)