ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.659

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百

「ヒボウ ダイ チュウ ショウ」

 いつのまにか、ひょっとすると、この国の、この星の、ピーポーたちは、誹謗中傷という言葉がもつ意味を、深く重く受け止めることができなくなってきているのではないのか、と、訝(イブカ)るAくん。

 「どういう意味ですか」、と、食い付く私。

 「あなたの、私の、ソレこそが、誹謗中傷なのだ、というその自覚をもてない、ということだ」、と、自信満々に言い切るAくん。

 自覚をもてない?

 どころか、誹謗中傷ではない、であるはずがない、という自覚だけはシッカリともっている、ということなのだろうか。

 おそらく、誹謗中傷を楽しんでいるわけでも、誹謗中傷に酔いしれているわけでもないのだろう。むしろ、ソレはダメだろ、と、世直し、人直し、ぐらいの、正義の気持ちであるのかもしれない。

 「知らず知らずのうちに、誹謗中傷をランク付けしてしまっているような気がするんだよな」

 「誹謗中傷をランク付け、ですか」

 「そう。誹謗、大、中、小、とね」

 ん?

 またまた、キモノ美人のZさんが指摘する前頭葉の老化の臭いが漂ってくる。

 「真面目に話されてますか」

 「僕は、いつだって真面目だ」

 ん、ん~。

 たしかに、そのほとんどは間違いなく真面目だとは思うけれど、Aくんの親父ギャグだけは、どうにもこうにも如何ともしがたい。 

 「相手の気持ちなどお構いなしに、勝手に都合よくランク付けしておいて、大、には、最大限に気を付けるけれど、中、は、それなりに、小、に至っては、罪の意識など微塵も、といった具合に、ね」

 なるほど、なるほどな~。

 たしかに、親父ギャグの臭いはプンプンとするけれど、でも、その中身には充分に納得できる。(つづく)