はしご酒(Aくんのアトリエ) その九十九
「エイ トボン ト グ ト」②
「英知の真逆には、凡、よりも、もっと罪深い漢字が鎮座しているような感じが、してならないのです」
「罪深い漢字が鎮座している、感じ、ね~」
「言っておきますけど、今のはダジャレでも親父ギャグでもナンでもないですから」
「違うの?」
「違います!」
チラリと不服そうな表情を浮かべるAくんを、失礼のないように軽く無視して話し続ける、私。
「そんなダーク感満載の真逆だからこそ、知、は、英、で、なければ、英、を、追い求めなければ、トンでもないモノになってしまうのではないか、って・・・」
う~ん、と、唸ったまま、そのまま、またまた沈黙の扉を開けてしまいそうなAくんに、私は、そうはさせまいと、「知、は、スキあらば、天使にも悪魔にも微笑みかけるでしょ」、と、畳み掛ける。
するとAくん、クルリと沈黙の扉に背を向け、「つまりナニかい、知、までもが、人間次第、人類次第、だということかい?」、と。
「というか、目的を見失えば、見間違えれば、知、もまた、悪魔に手を貸す、ということです」、と、あまりにも自信満々に語ってしまったものだから、その尻からなんだか妙に気恥ずかしくなって、その尻の真ん中あたりがムズムズとしてくる。
「それだよ、それ」
「えっ」
「まさにそれこそが、僕が危惧している、英知の意味の履き違え易さ、なんだ。たしかに君が言う通り、知、は、英でなければトンでもないモノになる。となると、そうだな~・・・、強いて言うなら、英知の真逆にある知とは、・・・、愚かなる、の、愚、愚知、そう、愚知、コイツが一番シックリときそうだ」
愚かなる知、愚、知、愚知、か~。
ようやく全てがスッキリとする。
知が、そんな愚かなる知、愚知にならんがためにも、学校教育が目指すべき豪華理念トリオのその一角にある知は、単なる「知」であってはならなかったのだろうな。そんな気がズンズンとしてくる。(つづく)