ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.358

はしご酒(4軒目) その百と九

「フアン!」②

 利便性と不安感は表裏一体。ナニかの弾みで、その利便性がもたらす充足感が満たされず、少しでも未来に対して、不安感を掻き立てられるようなことが起こった途端、そのシリから、ベンリザウルスのおどろおどろしい必殺技は、その威力を発揮し始めるのだ、と、怪談師の一龍齋貞水が乗り移ったかのような調子で、おどろおどろしく語り続けるAくん。

 だからこそ、Aくんが推奨する「アナログな力」が大切なのだろうな、という思いがプクッと湧き上がる。(本来、人間がもっている、はずである)アナログな力なくして、このベンリザウルスの狼藉(ロウゼキ)に打ち勝つことなどできない、と、たしかに思いはする。思いはするけれど、しかしながら、そういう私自身も、アナログな力など、もう風前の灯なのである。

 たとえば、ドラッグストアのある棚の商品が、意味不明に在庫切れ寸前になっていたりすると、バカみたいに不安にかられ、とりあえず、バカみたいに買ってしまいそうになる。

 コレもまた、ベンリザウルスの、人々の不安感をジリリジリリと煽りに煽る、実に巧妙、かつ、おどろおどろしい、そんな大技の一つなのだろう。

 当然の如く、お隣のAくんに、手厳しい「喝(カ~ツ)!」を入れられてしまいそうだけれど。(つづく)