ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.340

はしご酒(4軒目) その九十一

「ヅケヅケ!」②

 そんな奈良県に関する、あるニュースを、つい最近、TVで目にする。

 取り立てて、オ~!、と唸ったり、驚いたり、するような、そんなニュースではないのだけれど、なぜだかホッコリとしたテイストが、ジンワリ漂うニュースであったのである。

 「勿体をつけすぎだろ」、とAくん。

 そのニュースの中身を語るまでの前置きが、あまりにも長すぎたものだから、少々、苛立ちを隠せない様子。

 すいません、と、サクッと詫びを入れてから、慌てて、その中身に入る。

 「防火訓練のニュースだったんです」

 「するだろ、防火訓練ぐらい、奈良は文化財が多いんだから」

 「消防士の方が、さん付けするんですよ、さん付け」

 「するだろ、さん付けぐらい、普通に」

 「東大寺さん、唐招提寺さん、法隆寺さん、他にもぎょうさん(タクサン)ありますから、って、そういう、さん付け、なんかよくないですか、ホッコリしませんか」

 いくぶん体感温度が上がり気味の私のもの言いに、すぐさま、Aくんは、「あ~、なるほど、そういうさん付けね。東大寺さん、唐招提寺さん、法隆寺さん、か~、たしかに、いいよ、ホッコリする」、と、気持ちよく賛同してくれた。

 なにバカなこと言ってんだよ、と、軽くあしらわれてしまうのでは、と思っていただけに、少しばかりいい気分になる。

 「でしょ。文化財を、本当に、心から大切にしているんだな、って、思わせてくれる、そういう、さん付け、だと、思うんですよ、私は」

 するとAくんは、自信満々に結論づける。

 「奈良漬け(ヅケ)の、奈良県だけに、古(イニシエ)の時代から、さん付け(ヅケ)なんだろな、きっと」

 もちろん、絶対に、違うと思う。(つづく)