はしご酒(3軒目) その二十五
「ミツ ト ツキ」②
そんなこの国の美しい雫なコトバの一つに、このところ、新聞紙上などで、よく見かける「蜜月(ミツゲツ)」がある。
このコトバには、それほどの歴史はなく、新参者と言えなくもないけれど、それでも、味覚の「蜜」と視覚の「月」との黄金コンビのマリアージュなだけに、その響きの美しさは格別だ。
だがしかし、政治の世界、とくにトップ間外交あたりで使われ始めてからは、「蜜」のあのネチャッとした感触ばかりが際立ってしまい、少々、その印象が変わりつつある。こんなことでは、美しい雫なコトバであるはずの「蜜月」は、きっと、泣いている、はず、などと思っていたら、どうも、もともと「月」には、単なる見ための美しさだけでない意味が込められている、らしいのである。
なんと、西洋では、「愚かな」、「狂った」という意味まであるという「月」なのだけれど、「蜜月」のこの「月」に込められた意味は、むしろ、おそらく、月が形を変えていくことに由来する「一時的な感情」、もしくは、「今だけのもの」、あたりなのかな~、と、私は思っている。
たしかに、そう考えると、なぜ、新聞紙上などで、この「蜜月」というコトバが頻繁に使われるのか、使われるようになったのか、という疑問の答えが、意外と簡単に見えてくるような、そんな気がする。(つづく)