ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.196

はしご酒(3軒目) その二十五

「ミツ ト ツキ」②

 そんなこの国の、美しい雫系のコトバの一つに、このところ、新聞紙上などでよく見かける「蜜月(ミツゲツ)」がある。

 そう、蜜月。

 このコトバには、それほどの歴史はなく、新参者と言えなくもないけれど、それでも、味覚の「蜜」と視覚の「月」との黄金コンビのマリアージュなだけに、その響きの美しさは格別だ。

 だがしかし、政治の世界、とくにトップ間外交あたりで使われ始めてからは、「蜜」のあのネチャッとした感触ばかりが際立ってしまい、少々、その印象は変わりつつある。こんなことでは、美しい雫系のコトバであるはずの「蜜月」は、きっと、泣いているに違いない、などと思っていたら、どうも、もともと「月」には、単なる見ための美しさだけでない意味が込められている、らしいのである。

 その、月の、知られざる意味とは。

 なんと、なんと西洋では、「愚かな」、「狂った」という意味があるという。そして、もう一つ、「蜜月」のこの「月」に込められた意味、ソレは、月が形を変えていくことに由来する「一時的な感情」。あるいは、「今だけのもの」。たしかに、そのあたりが、ビタッとくるように思える。

 蜜月。

 一時的な感情による、今だけの、蜜のような関係。

 そう考えると、なぜ、新聞紙上などで、この「蜜月」というコトバが頻繁に使われるのか、使われるようになったのか、の、その答えが、意外と簡単に見えてくるような気がする。(つづく)