ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.197

はしご酒(3軒目) その二十六

「ハシリ!」①

 「旬は、まだまだ先ですが」

 スッと目の前に出された、その見た目も香りも、秋を小さく丸めたような焼き栗に、おもわず「おっ」、と、声をあげてしまった。まさか、ここで、しかも、この時期に、(よく見かける甘栗ではない)焼き栗に出会えるとは、と、すっかりルンルン気分の私は、なかなかの焼き栗ファンなのである。

 「小振りの山栗をローストしたものです。そのグラッパと、いい相性だと思いますよ」

 寡黙なバーテンダーの声が、あまりにも素敵なので、おそらく、その声で説明されてしまったら、なにを出されても、全て美味しく見えてしまうだろうな、などと、思いつつ、その焼き栗を一つ頬張ってみる。そして、噛み砕いた焼き栗が口の中に残っているうちに、グラッパを少しだけ流し込んだ。

 「美味い!」

 たしかに美味いのである。マリアージュとは、まさに、こういうことを言うのかもしれない。

 すると、「着物も、この焼き栗と同じなのよね」、とZさん。

 ナニが、ドコが、同じなのか。

 その二つを手早く頭の中に並べ、その共通点を見つけようと試みてはみたけれど、無情にも、全くもってサッパリわからない。(つづく)