ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.544

はしご酒(4軒目) その百と百と八十五

「ロックハアルケド ロールハドウシタ(キース・リチャーズ)」

 あの、Zさんイチオシのドラマー、チャーリー・ワッツと、私が、なぜかお気に入りのロン・ウッドを擁するモンスターバンド、ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズのある言葉が、よくわからないまま、なんとなく忘れられない、とAくん。

 そういえばAくんは、昔から、いつも後半のどこかで、著名人の名言シリーズに突入する。

 「その、キース・リチャーズの言葉、気になりますね~。どんな言葉なんですか」、と私。

 「残念ながら、和訳したものしか知らないんだけれど、たしか、そこにロックはあるけれどロールはどうしたんだよ、みたいな、そんな感じの言葉だったと思う」、とAくん。 

 ん?、数時間前、たしか、Zさんも、ソレとよく似たニュアンスのことを宣っていたような気がする。ソコにとどまったままでいるのではなく、コロコロと転がり続けるローリングなストーンでなければ、という、そんな、よりアグレッシブな自分自身であり続けたい的なZさんの言葉であった、と、記憶する。

 「彼は、その言葉に、ナニを込めようとしたのでしょう」、と私。

 するとAくん、Aくん自身が、Aくんなりに、キース・リチャーズの、その、言葉の中から汲み取った、ロールでなければならないロックの、その、核の部分の、その、扉を、静かに開く。

 「先ほどの、ヤヤこしい解釈の話じゃないけれど、僕なりに、解釈し、思うことがある。あの、僕が敬愛するキング牧師、の、名言の一つに、沈黙は時として裏切りになる場合がある、が、ある。のだけれど、キースは、動きを止めたロックもまた、キング牧師が言うところの、沈黙、と、同じだ、ということを言いたかったのではないか、と、かなり勝手に思っている。ちょっと無理があるかもしれないけれど」

 動きを止めたロックか~。

 ソレは、私が、私なりに、以前から、漠然と思っている、様式美に魂を奪われたロック、というヤツと、似たモノなのか、全く別モノなのか、どうなのだろう。

 なんにせよ、なんとなく上手くいっているように見える現状に、ちょっと待てよ、ソレでいいのかよ、と、変に力むこともなく問題を、提起することができるという、そんなところが、Aくんが惚れ込む、キース・リチャーズの、たまらない魅力なのだろうな、きっと。(つづく)