ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.599

はしご酒(Aくんのアトリエ) その四十

「ヨウカイ オタメゴカシ」①

 必要以上に丁寧すぎるモノ言いには、目には見えないトゲがある。しかも、毒まで忍び込ませてあったりする、と、突然、Aくんに言われたりすると、たしかに、そうかもしれないな、と、なんとなくながら思えてきたりする。

 そういえば、あるミュージシャンが、あるTV番組で、あることを宣っていたことを思い出す。

 

 やっていることはトンでもないほどダメなんだけれど、それほど悪いヤツじゃない、みたいな人間と、ナニゴトもソツなく上手いことやってはいるんだけど、実は悪いヤツ、みたいな人間と、が、この世にはいるじゃないですか。 

 

 ナカナカな指摘だが、前者も後者も、残念ながらどちらも、諸手を挙げて歓迎、というわけにはいかなそうだ。でも、そんな、いかなさそうな両者の中で、Aくんが言うところの、毒まで忍び込ませたトゲの持ち主は、となると、それは間違いなく、後者、ということになるのだろう。

 するとAくん、「妖怪オタメゴカシ、世に憚(ハバカ)る」、と、唐突に。

 「えっ」

 「妖怪オタメゴカシ!、知らない?」

 「よ、妖怪、オタメゴカシ、ですか」

 Aくんには申し訳ないが、そんな妖怪のことなど、おそらく誰も知らないと思う。

 そもそも、オタメゴカシ、などという言葉、半世紀前後も生きてきて、初めて耳にする。ナンのことやら全く想像すらつかない。

 「その、妖怪オタメゴカシたちの得意技が、毒まで忍び込ませているトゲまみれのクソ丁寧なモノ言い、だというわけだ」

 想像すらつかないけれど、なんだかモノ凄くダークな強者(ツワモノ)である、ということだけは伝わってくる。

 とはいえ、やはり、謎に包まれ過ぎているだけに、その正体が、ズンズンと気になってくる。(つづく)