ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.827

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十八

「ヨウカイ ロンテンノスリカエル」

 先ほど話題に上がったルサンチマン、が、引き起こしがちな、滅法ハデな噛み付き攻撃も、もちろん、充分に厄介なんだけれど、ソレとはまた別タイプの厄介さを誇る噛み付き攻撃を、滅法、得意としている両生類系の妖怪がいる、と、またまた唐突に、ヤヤこしいことを語り始めた、Aくん。

 この世に、爬虫類やら両生類やら系の妖怪、数多(アマタ)おれど、とくに、その、姑息で不気味な似非(エセ)インテリ妖怪は、オキテ破りの論点の掏(ス)り替えと、巧みな弁舌を駆使して、ジワリジワリとその存在感を獲得しつつある、という。

 「ナンなのですか、その、オキテ破りの論点の掏り替えをウリにしている妖怪、って」、と、噛み付くとまではいかないまでも、それなりのトーンで問うてみる。

 するとAくん、ニンマリと笑みを浮かべて、こう返してくる。

 「たとえば、論戦において、窮地に陥った側のその耳元で、ソイツは、こう囁(ササヤ)くわけ。相手の言うことなんてケロ~、まともに受け止める必要なんてないケロケロ~、ココはスルリと論点を掏り替えちゃってケロケロケロ~、起死回生の大逆転を狙うケロケロケロケロ~、っとね」

 な、なん、なんだ、その、ケロケロケロ~って。なんだか腹が立ってきて、ゲロゲロゲロ~っとムカムカしてくる。

 「それが、両生類系妖怪の雄、ロンテンノスリカエル。上手い具合に手前勝手に都合よく、陸地と水中とを行ったり来たり、みたいな、そんなズルい器用さが、この妖怪の不気味なる武器、と、いうわけだ」

 不気味なる、武器、か~。

 弁舌巧みにスリリスリリと掏り替えに掏り替えまくり倒して相手の勢いを削ぎ、その、怯んだ隙に乗じて屁理屈を捏(コ)ねくり回して、噛み付く、らしい、両生類系妖怪ロンテンノスリカエル。そんな、姑息な一発逆転狙いの妖怪なれど、決して、侮るわけにはいかない。ということだけは、私にも、わかる。(つづく)