はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と三十五
「アメノアトニハ ニジガデル、カ~」
使い古された諺(コトワザ)ではあるけれど、でもやっぱり、ソコに込められた「希望」に、失いかけた「勇気」を貰う。みたいな、そんな諺があったりするんだよな~、とAくん。
「そんな諺の中の屈指の一つ、ソレが」
「それが?」
「No Rain, No Rainbow!」
「なんとなく、あの、『ノーウーマン、ノークライ(No Woman, No Cry )』の親戚みたいな諺ですね」
「あ~。でも、似てはいるけど、かなり違う」
「違う?」
「No Woman, No Cry。の、 後半の『No 』は、たしか『Don't 』。どちらかというと、希望に満ちた、というよりは、むしろ、泣かないでくれよ~、という懇願のメッセージだろ。ソレに比べて『No Rain, No Rainbow! 』は、文字通り、虹の出ない雨はない、雨のあとには虹が出る。きっと明日はいい天気、的な、そんなハワイの諺らしいんだよね。ハワイの情景がファワイ~と浮かんでくるような、ステキな諺だとは思わないかい」
ファワイ~と、か~。
またまたあのZさんに、前頭葉の老化を指摘されてしまいそうなAくんのダジャレワールドではあるけれど、おっしゃる通り、そのダジャレのように、ハワイの美しい情景がファワイ~と浮かんでくるような気がしてくるから不思議だ。
「雨降って地固まる、とか、災い転じて福となす、とか、とは、ナニかが微妙に違うような気がしている」
雨降って、地固まる?
災い、転じて、福となす?
ナニが、ドコが、ドウ違うというのだろう。
「ナニが違うのでしょうね」
「そうだな~・・・。ま、なんとなくなんだけどね、ハワイのその諺からは、一切、実利主義的な臭いがしてこないんだよな~」
「じ、実利主義的な、臭い、ですか」
「地が固まる、とか、福となす、とかといった実質的利益がなくても、雨上がりの空に虹が架かる、ソレだけで充分じゃないか、ソレだけでドコまでも前向きな、晴れやかな、そんな気持ちになれるじゃないか、というところが、ところこそが、ファワイ~と漂ってくるハワイらしさなんじゃないか、ってね」
ノーレイン、ノーレインボー。
雨のあとには虹が出る、か~。
損得勘定抜きのその爽やかなる「希望」に、乾杯!
わっ、美味しいな、この芋焼酎。
(つづく)