ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.904

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と三十五

「アメノアトニハ ニジガデル、カ~」

 使い古された諺(コトワザ)ではあるけれど、でもやっぱり、ソコに込められた「希望」に、失いかけた「勇気」を貰う。みたいな、そんな諺があったりするんだよな~、とAくん。

 「そんな諺の中の屈指の一つ、ソレが」

 「それが?」

 「No Rain, No Rainbow!」

 「なんとなく、あの、『ノーウーマン、ノークライ(No Woman, No Cry )』の親戚みたいな諺ですね」

 「あ~。でも、似てはいるけど、かなり違う」

 「違う?」

 「No Woman, No Cry。の、 後半の『No 』は、たしか『Don't 』。どちらかというと、希望に満ちた、というよりは、むしろ、泣かないでくれよ~、という懇願のメッセージだろ。ソレに比べて『No Rain, No Rainbow! 』は、文字通り、虹の出ない雨はない、雨のあとには虹が出る。きっと明日はいい天気、的な、そんなハワイの諺らしいんだよね。ハワイの情景がファワイ~と浮かんでくるような、ステキな諺だとは思わないかい」

 ファワイ~と、か~。

 またまたあのZさんに、前頭葉の老化を指摘されてしまいそうなAくんのダジャレワールドではあるけれど、おっしゃる通り、そのダジャレのように、ハワイの美しい情景がファワイ~と浮かんでくるような気がしてくるから不思議だ。

 「雨降って地固まる、とか、災い転じて福となす、とか、とは、ナニかが微妙に違うような気がしている」

 雨降って、地固まる?

 災い、転じて、福となす?

 ナニが、ドコが、ドウ違うというのだろう。

 「ナニが違うのでしょうね」

 「そうだな~・・・。ま、なんとなくなんだけどね、ハワイのその諺からは、一切、実利主義的な臭いがしてこないんだよな~」

 「じ、実利主義的な、臭い、ですか」

 「地が固まる、とか、福となす、とかといった実質的利益がなくても、雨上がりの空に虹が架かる、ソレだけで充分じゃないか、ソレだけでドコまでも前向きな、晴れやかな、そんな気持ちになれるじゃないか、というところが、ところこそが、ファワイ~と漂ってくるハワイらしさなんじゃないか、ってね」

 ノーレイン、ノーレインボー。

 雨のあとには虹が出る、か~。

 損得勘定抜きのその爽やかなる「希望」に、乾杯!

 

 わっ、美味しいな、この芋焼酎

(つづく)