ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1156

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と八十七

「ダカラ ナクナラナインダヨ イジメハ」

 「損得と打算と怯(オビ)えと無難主義との合体版のような大人たちの世界が、微動だとせず、未だ、そこかしこであり続けているんだからな~」、と、嘆くAくん。

 ん~。

 まさに、先ほどの「そんたく4兄弟」から、唯一真っ当な長男だけが抜けたような、そんな「そんたく3兄弟」そのものだな。

 「そうした大人たちの歪んだ世界が、そのまま、子どもたちの世界に影響を及ぼして、見事なまでに、ダークに、反映されてしまっているということだ」

 「子どもたちの世界に、ですか」

 「そう。だから、なくならないんだよ、イジメは」

 ん、ん~。

 「一部の、と、思いたいが、そうした大人たちが、そんな世界を、平然と、つくり上げているものだから、子どもたちにとっての悪しき見本に、なってしまっているのだろうな」

 悪しき見本、か~。

 「ある子どもたちの世界の、ある出来事」

 ん?

 「裕福で、腕力も自慢の、いわゆるイジメっ子がいたとしよう。やたらとイロイロなモノをプレゼントしまくるそのイジメっ子の周りには、濃淡はあるものの、多くのコバンザメたちがへばり付いている。そのイジメっ子が、ある少年をターゲットにした。イジメられたその少年は、担任の先生に相談する。先生は、クラスの子どもたちから聞き取りを始める。一緒になってイジメていた子どもたちは、もちろん、否定するし、見て見ぬふりをしてきた子どもたちは子どもたちで、知らないとシラを切る。そして、当然のごとく、主犯格の少年は、無実を訴える。すると、表面的な聞き取りを終えた先生は、勇気を振り絞って相談をしにやってきたその少年に、『神経質になりすぎているんじゃないか?。対立せず、みんなと仲良くしないと』などと宣いつつ、早々に幕引きを図る。言うまでもないが、そのイジメ、一層、陰湿なモノにカタチを変えながら、その後もズルズルと続く。コレって、まさに、あの、歪んだ、歪みまくった大人たちの、あの、トンでもない事件と同じだろ。違うかい。そうは思わないかい」

 う、うわ~。

 大人たちの世界の、損得と打算と怯えと無難主義が、そのまま子どもたちの世界を、ダークに染め上げてしまった。と、いうことか。

 この際、Aくんのその話が、実際にあった話なのか、それともフィクションなのか、などということはどうでもいい。知りたいとも思わない。大事なコトは、捨て置けないコトは、大人たちの世界が真っ当でなければ、自ずと、子どもたちの世界も歪んでいくのだ、というコトだ。そのコトを、私たちは、絶対に、忘れてはいけない。(つづく)