ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1155

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と八十六

「ワカイヒトニ ヒキツグ」

 ある一人の老兵が、「若い人に引き継ぐ」と、引退を決意した。その後は一市民運動家として、というコメントもまた、なかなか気持ちいい。もちろん、経済政策面などで賛否両論、たしかにあるにはあった政治家ではあるものの、ナニを隠そう、この僕が、初めて、国政選挙で我が清き一票を投じた若き立候補者が、彼だったんだよね。と、あの頃を懐かしむかのように語る、Aくん。

 たしか、そもそもAくんは、市川房枝という政治家、というか、活動家の、大ファンであったらしく、その愛弟子ともいえるその彼を、どうしても応援したくなった、と、以前、話してくれた。

 そう、市川房枝

 それはそれは素晴らしい人物であった、と、その時、Aくんは、熱く、熱く語っていた。

 そんな彼女の愛弟子であったあのピッカピカの青年が、「若い人に引き継ぐ」と、引退を決意したのだ。やはり、感慨深いものがあるのだろう。

 そう、若い人に引き継ぐ。

 この場合のこの言葉、一部の議員たちの専売特許である「世襲議員」とか「二世議員」とかとは、全く意味が異なる。

 つまり、その「若い人」とは、我が子でも、我が秘書でも、親戚筋でもなく、大志を、夢を、抱き、真実と正義と愛を胸に、怯まず前に突き進む、そんなエナジーの塊(カタマリ)という意味の「若い人」なのであって、ソレ以外のナニモノでもない。

 そう、そういう若い人に、引き継ぐのである。

 ソレができずに、ズルズルと、未だ、権力にしがみつこうとするだけの年老いた重鎮たちがいる。そんな方々に、そろそろ印籠を渡してもバチは当たらないだろう。(つづく)