はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と六十一
「ヘイト クライミング!」
その人の、その組織の、その属性を、理不尽に狙い撃ちして口撃する、ヘイトクライム。
そう、ヘイトクライム。
そのヘイトクライムが、どうして、この世に、生まれ落ちたのか。どうして、蔓延(ハビコ)り続けるのか。の、そのメカニズムを解明しない限りは、おそらく、この世から、消えてなくなることなどないような気がする。
そう、hate crime 。憎悪、犯罪。
ナゼ、そうした特定の属性を、憎悪の対象とすることができるのか。
ナゼ、ソコまで強い憎悪を抱けてしまうのか。
ナゼ、そんな自分を、自分の考えを、ナニがナンでもドコまでも正義だと、信じ切れるのか。
ん~、考えれば考えるほど、一層、ナゾめいてくる。
ナゼなのだろう。
メカニズムの「メ」の字も、私には見えそうにない。
そんな「crime 」と、限りなく発音が似ている「climb」という「クライム」がある。あの、ロッククライミングの「クライム」である。
ある人が、「ナゼ、あなたは、そのロックを、岩壁を、よじ登るのですか」と、問う。すると、クライマーは、こう答えた。「ソコに、ロックが、岩壁が、あるからだ」と。
コ、コレか?
ひょっとしたら、コレと同じような理由なのかもしれない。つまり、論理的に、科学的に、地政学的に、歴史学的に、民俗学的に、コレコレこういう理由だからコウなんだ、などといったモノではなくて、ただ、ソコに、あるからだ、いるからだ、みたいな、そんな、極めて情緒的なモノなのではないのか。
そう、情緒的、モノ。
ん~、ナゾめいてくればくるほど、一層、そんなモノのように思えてくる。
そんな情緒的なモノに背中を押されながら、クライマーたちは、そのヘイトの岩壁をクライミングしていく。(つづく)