ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1094

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と二十五

「コイツヲ タタキツブス タメナラ」

 コイツを叩き潰すためなら、使えるモノはナンだって使ってヤルぜ、と、いう、かなりヤバいヤリクチ。まだまだ、そこかしこで幅を効かしているよな~、とAくん。多めに残っていたグラスの中のオレンジワインをグビリと呑み干し、血気盛んに、その続きを捲し立てる。

 「たとえば、外国人労働者。ある外国人労働者が、なんらかの理由で犯罪を犯してしまった。と、しよう。すると、突然、水を得た魚のように色めき立って、外国人労働者は危険だ。だから、ダメなんだ。と、なる。たとえば、女性。ある女性が産休を取った。と、しよう。すると、無責任なんだよね。女性に重要なポジションは無理だな、やっぱり。だから、ダメなんだ。と、なってしまう。たとえば、LGBTQ 。セクシャルマイノリティ性的少数者。いかにも、ことさら身近にあったかのように、男性の身体であるにもかかわらず、私は女性だと偽って、女性トイレに、女湯に、堂々と入る、などというコトもあるだろ。あるかもしれないだろ。違うかい。と、しよう。すると、そうしたコトを防ぐ意味でも、そう易々と『性自認』なるモノを認めるわけにはいかないんだ。だから、だからダメなんだ。と、無理やり、強引に結論付けてしまう」

 ん~。

 Aくんの、マジでダークに暑苦しい話たち。もう、永久に終わらないかもしれない、と、おもわず思ってしまうぐらい、この手のヤリクチが、国会なども含めて、そこかしこで罷り通りまくっている、というコトなのだろう。

 「ナゼ、そんな稚拙で姑息なヤリクチに頼らずに、もっと真っ当に、真っ正直に、真っ正面から堂々と、戦うことができないのでしょうか」

 「ナゼって、そりゃ、戦えないだろうよ。そもそも論理的にどうこうという話じゃないんだから」

 えっ。

 「ただ、そういう考え方の方々が岩盤支持層だから、という、ほぼ、そういう理由だけで、あの人たちは、オキテ破りのあの手この手で、ナンとしてでも票を獲得しよう、逃げ切りを図ろう、と、しているに過ぎないわけだからな」

 ん、ん~。

 もちろん、そうではない方々もおられると信じたいが、信じるには、ちょっと、という方々の顔が、あまりにも数多くチラついたりするものだから、ドッと、ドドッと疲れる。

 そんな、ズシンと重い疲労感の中、Aくんの「だからダメなんだ」シリーズを聞きつつ、私は、グサリグサリと思うのである。

 たとえば、圧倒的な支持を得ている政党の、ある議員がトンでもないコトをヤラかした。と、しよう。でも、だからその政党はダメなんだ、とは、ならない。

 たとえば、圧倒的な数を誇る男性、の、議員たちの、ある男性議員がトンでもないコトをヤラかした。と、しよう。でも、だから女性でないとダメなんだ、とも、ならない。

 そんなコトは、他にも山のようにある。

 ナゼ、なのか。

 Aくんが言うように、そうした考え方を望む声が圧倒的に多いからなのか。

 では、ナゼ、そういう考え方が、圧倒的に多いのか。

 残念ながら、私ごときでは、そのナゾは解明されそうにない。

 ただ、私なりにコレだけは自信をもって言える。

 コイツを叩き潰す、の、コイツは、弱きコト、モノ、ヒト。そう、人。そう、弱者。圧倒的に弱き立場のピーポーたちを、平気な顔をして、平然と、叩き潰せるような人間が、政治の世界に身を置くコト、それ自体、トンでもなく罪深い。このコトだけは、絶対に、間違いない。(つづく)