ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1069

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と百

「ソノ ウゴキニ ミトレル」

 どの分野でもそうだと思うが、卓越した職人さんのその無駄のない流れるような動きは、マジで美しくて、ウットリと見惚(ト)れてしまうことがあるんだよな~、とAくん。

 ソレは、ソレに関しては、躊躇なく、すぐさま納得できる。

 そもそも「卓越する」とは、そういうコトなのだろう。余計なモノ、余分なモノ、が、削ぎ落とされて、ナンの力みもなくスッとソコにある、みたいな、そんなイメージが「卓越する」にはある。

 「残念ながら、惜しまれつつ、諸事情により店じまいされてしまったのだけれど。何度も、何度も伺わせてもらったラーメン屋さんのご主人の、その一連の動きがまさにソレで、一切の凸凹(デコボコ)感がなく、まるで、穏やかな、緩やかな川の流れのようでさえあったんだよね」

 「ラーメン屋さん、ですか」

 「そう。静寂のラーメン屋さんでさ~、お客さんも、目の前に運ばれてくるまで、ただひたすら沈黙。聞こえてくるのは、湯切りのチャッチャッチャッ、と、自慢の香り豊かな黒小麦の麺を啜(スス)るズルズルズル、ぐらい。そんなラーメン屋さんのご主人の、その動きが、とにかく美しかったわけよ」

 「ソレ、わかるような気がします」

 「嬉しいね、わかってくれるかい。で、当然のごとく、目の前に運ばれてきた完成品もまた、その味も含めて完璧に美しくて、ホント、最初から最後まで全て丸ごと見惚れてしまう」

 「無駄のない美しい動きが、無駄のない美しくてモノをつくる、というコトですね」

 「そう、そういうこと。憧れるよね、そういった卓越した職人さんに。その技に、その美意識、美学に、その心意気に」

 「憧れますよね~」

(つづく)

 

 

 

 

追記

 そうした美しさが、この国の、この星の、政治関係者たちにも、権力者たちにも、あればいいのに。