はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と百
「ソノ ウゴキニ ミトレル」
どの分野でもそうだと思うが、卓越した職人さんのその無駄のない流れるような動きは、マジで美しくて、ウットリと見惚(ト)れてしまうことがあるんだよな~、とAくん。
ソレは、ソレに関しては、躊躇なく、すぐさま納得できる。
そもそも「卓越する」とは、そういうコトなのだろう。余計なモノ、余分なモノ、が、削ぎ落とされて、ナンの力みもなくスッとソコにある、みたいな、そんなイメージが「卓越する」にはある。
「残念ながら、惜しまれつつ、諸事情により店じまいされてしまったのだけれど。何度も、何度も伺わせてもらったラーメン屋さんのご主人の、その一連の動きがまさにソレで、一切の凸凹(デコボコ)感がなく、まるで、穏やかな、緩やかな川の流れのようでさえあったんだよね」
「ラーメン屋さん、ですか」
「そう。静寂のラーメン屋さんでさ~、お客さんも、目の前に運ばれてくるまで、ただひたすら沈黙。聞こえてくるのは、湯切りのチャッチャッチャッ、と、自慢の香り豊かな黒小麦の麺を啜(スス)るズルズルズル、ぐらい。そんなラーメン屋さんのご主人の、その動きが、とにかく美しかったわけよ」
「ソレ、わかるような気がします」
「嬉しいね、わかってくれるかい。で、当然のごとく、目の前に運ばれてきた完成品もまた、その味も含めて完璧に美しくて、ホント、最初から最後まで全て丸ごと見惚れてしまう」
「無駄のない美しい動きが、無駄のない美しくてモノをつくる、というコトですね」
「そう、そういうこと。憧れるよね、そういった卓越した職人さんに。その技に、その美意識、美学に、その心意気に」
「憧れますよね~」
(つづく)
追記
そうした美しさが、この国の、この星の、政治関係者たちにも、権力者たちにも、あればいいのに。