はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と九十四
「アゲアシヲ トル アゲアシヲ トラレル」
「文章力も語彙力もナニもない僕なんかは、どうしても、怒りを制御しきれなくなって言葉のチョイスを誤ってしまう、というミステイクを犯しがち、な、わけ」、とAくん。
ん?
「適切な言葉を駆使し、理路整然と説明し、論理的に説得し、クールに納得させる、ことができない」
んん?
「それゆえ、イライラが募り、カリカリし、カッカして、その苛立ちを、怒りを、相手に、突っ込まれドコロ満載の言葉でブツケてしまっては自爆する、という、最悪のパターンを繰り返す」
ん~。
「ソレまでの話の流れ、話の核心、などは、この際どうでもよくて、その、言葉のチョイスのミステイクが、言葉ジリが、ココぞとばかりに思いっ切り突かれ、叩かれまくる、というわけだ」
あ、あ~。
Aくんが言わんとするコトが、なんとなく、ようやく少し見えてきた、かな。おそらく、ソレは、Aくんに限ったコトではない。
「僕はね、強者と弱者という対等ではない関係性の中では、その両者の力の差があればあるほど、強者は、弱者の揚げ足を取るべきではない、と、思っている」
「弱者の揚げ足などを取っている場合ではない、と」
「そう。この『揚げ足を取る』というカウンターパンチ系の必殺の切り返し技は、弱者にのみ許されたオキテ破りの邪道だということ。強者が、そんな邪道にウツツを抜かしていてどうする、ということだ」
なるほど。
「多分、気に入らない弱者を潰すために、一部のメディアも含めて、圧倒的な強者たちが、ソコに群がる者たちが、そうしたモノ言う弱者たちの揚げ足を取ることに躍起になるのだろうけれど、本当に問題なのは、弱者が指摘しようとした、強者による根本の部分の致命的なミステイク、で、あるはずだ」
「痛いトコロを突かれたものだから、その邪道で、ソコから、周囲の一般ピーポーたちの目を逸らせてケムに巻く、という姑息な作戦なわけですね」
「そう、目を逸らせてケムに巻く。その、通り。上手いこと言うよな~」
プチ褒められてしまい、少し照れてしまう。
Aくんが言うように、弱者の、言葉のチョイスなどといった表層的なミステイクよりも、ウンと恐ろしいモノがあるというコトを、周囲の私たちは忘れるべきではない、とは思う。とは思うのだけれど、その、取り返しがつかないほどのトンでもなく問題なモノ、というヤツが、いったい、ナンなのか。を、私ごときが見抜くコト自体、とても難しいコトのように思えてならないのである。
「その、根本の部分の致命的なミステイク。私にソレが見抜けるか、あまり自信がないのですが。でも、それでも、圧倒的な強者に対して反旗を翻してはみたものの、言葉のチョイスを誤ったがために窮地に陥ってしまった弱者に対しては、最大級の慎重さで臨みたいとは思っています」
「いい心掛けだ。ソレぐらいで丁度いい。ソレぐらいの慎重さで臨まないと、強者にとって都合がいい方に、どうしても、ズルズルと引っ張られていってしまいがちだからな~、この世の中は」
(つづく)