ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.950

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と八十一

「キ~タゾッワレラ~ノ ク~ル~ト~ラ~マ~ン!」

 「人間なんて完璧じゃないからな~」

 ん?

 「そんなに悪人でなくても、ほとんど悪意なんてなくても、おもわずヤッちまった、みたいなコト、どうしてもあったりする」

 んん?

 「言い換えるなら、おもわずヤッちまった、みたいなコトで、その人そのものを全否定してしまうのは、けっして好ましいことではない、ということ」

 あ~。

 ソレなら辛うじて理解できる。

 「つまり、仮に、おもわずヤッちまった、みたいなコトで、その人そのものを全否定しようとする場合、おそらく、最初からその人を全否定したいという強い思いがソコにある、ということなんだろうな」

 全くもってその通りだと思う。

 たとえば、揚げ足。

 イカもタコもその足は本当に美味しいのだけれど、この揚げ足だけはどうにもいただけない、という、そんな、揚げ足。が、取られるのは、いつだって揚げ足を取りたいという強い思いを抱いている者がソコにいるから。本来、突っ込むべきトコロは、揚げ足のような、そんな表層の部分なのではなく、もっともっと根っこの部分、その人を形づくっている根っこの部分のはずである。ソコに、クールに、かつ、ストロングに、突っ込みを入れなければ、突っ込みを入れる意味がない。

 「クールマン!」

 えっ!?

 凄まじく唐突に、Aくんの雄叫び。

 「な、なんですか、ソレ」

 「クールパーソン。と、言った方がいいかな」

 「クール、パーソン?」

 「いや、やっぱりクールマンがいいな。なんとなくウルトラマンみたいで」

 「じゃ、さしずめ、クールトラマン、ですね」

 「いいね~、ソレいいよ。クールに相手の意見に耳を傾け、クールに思慮を巡らせ、クールに結論付ける。ソレができる天下のスーパーヒーロー、クールトラマン。気に入った。コレからはそう呼ぶようにしよう」

 我々の前頭葉の老化を常に指摘する、あのキモノ美人のZさんが今ソコにいたら、絶対にまたまた、我々の、その限りなくオヤジなダジャレに、容赦なく鋭い突っ込みを入れてきたに違いない。とは思うけれど、でも、この「クールトラマン」、私も、結構気に入っている。

 「ほら、このところ目一杯軽んじられている、あの国会。ほとんど議論の場として成立していないだろ。つまり、クールトラマンでなければ、真っ当な国会での議論なんてできっこない、ってことだよな」

 なるほど。

 人間は完璧じゃない、もちろん、自分なんて全然完璧じゃない、という自覚さえあれば、相手の発言に、クールに耳を傾けることなど容易いことのはずなのに、ソレができない、クールトラマンになれない、そんな権力だけは握りまくっているシモジモじゃないエライ人たち。

 国会での議論さえ充分にできない、となると、申し訳ないが、そろそろ引退を考えていただいても宜しいのではないだろうか。とさえ、失礼ながらも、どうしても思ってしまう。

 するとAくん、ナニを思ったのか、またまた声高らかに、思いっ切り歌い上げてみせる。 

 き~たぞっ

 われら~の

 ク~ル~ト~ラ~マ~ン

(つづく)