ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1054

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と八十五

「ウッスラトシタ ジャクシャヘノ フマン」

 「自己責任論の台頭とともに、また、もう一つ、ジワジワと澱み、水底(ミナソコ)にドロドロと溜まり始めているモノがある。ソレが」

 ん?

 「ウッスラとした弱者への不満」

 んん?

 「さすがに大声で声高らかに、というわけではないけれど、人知れず、ウッスラウッスラ、ソロリソロリ、と、その厚みを増しつつあるというわけ」

 自己責任論によって、ピーポーたちの不満の矛先がソロリソロリと弱者に向く、か~。

 「けっして楽ではないにもかかわらず、マジメにキチンと納税したその金(カネ)が、ナゼ、弱者なんぞのために使われなければならないのか、自己責任でヤレよ、みたいな、そんな感じなのかもな」

 ナ、ナンという・・・。

 おそらく、その延長線上に、高齢者は老害化する前に集団自決すればいい、という、トンでもなく破壊的で、乱暴で、稚拙(チセツ)な、あの「集団自決」論も鎮座しているのだろう。

 「しかし、ナゼ、不満や怒りのその矛先が、強者に向かないのですか」

 「ホント、向かねえよな~。もちろん、皆が皆というわけじゃなくて、立ち向かっているブラボ~なピーポーたちも数多くおられるわけだけれど。でも、どうしても、ズルズルと、ズルズルと、弱者へ弱者へと向きがちだと言わざるを得ない、かな」

 「普通、圧倒的な権力を握る、大いなる責任がある、そんな強者に不満やら怒りやらが向くはずでしょ。違いますか」

 「たしかに、普通はそうだよな。ひょっとしたら、ソレもまた、強者たちによる巧みな戦略の賜物(タマモノ)なのかもよ」

 巧みな戦略の、賜物?

 「そうした巧みな戦略が、一般ピーポーたちの心の底に、無意識のうちにジワリジワリと弱者への不満が溜まっていくように導いているのだとしたら、コイツもまた、偏見や差別や分断を生み落とす厄介なヤツ、ってコトになりますよね」

 「なる。間違いなく、なるよな~」

 そう吐き捨てつつ、Aくん、テーブルの上をササッと片付けて、またまた奥へと姿を消してしまう。(つづく)