ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.954

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と八十五

「ガイアツダノミン」

 ビタミン。

 幼い頃から妙に気になっていた栄養素が、あの、ビタミン。最初は、酸っぱいモノがビタミン。だから、酸っぱいモノは身体にいい。と、マジで思っていた。その後、サツマイモにはレモン何個分のビタミンCが含まれている、とか、豚肉にはビタミンB群が豊富で夏バテに最適、とか、といった、目から鱗の情報を耳にして、ようやく、なるほど、酸っぱさとビタミンとはナンの関係もないんだ、と気付かされる。それでも、ビタミンそのものが理解できたわけではなく、今も尚、謎めいた栄養素だな、と、思い続けてはいる。

 そんな謎めいた栄養素であるビタミンたちの中でも、とりわけ、この国が頼りにしてきたビタミンがある、という。

 それが、ガイアツダノミン。

 もちろん、食品系のビタミンではないが、その効力は、食品系のソレに引けを取らない、らしい。

 「ガイアツダノミン、ご存じですか」

 「ガイアツダノミン?。な、なんだよ、ソレ」

 「外圧がなければ、ナニも考えられない。検討できない。変えられない。そんな時こそ、だからこその外圧頼み。効果バツグンの社会系ビタミン、ソレが、ガイアツダノミン、です」

 「ほ~。テレビCMみたいで、なんかスゴいな、ソレ」

 「その最たるモノが、あの敗戦であったと、私は思っています。戦争をしなければ、そして敗戦のその日を迎えなければ、ナニも考えられない。ナニも検討できない。そして、ナニも変えることができない」

 「ん~・・・」

 「そして、原発。トンでもない事故があって初めて最悪を想定できる。事故もまた、一つの外圧なわけですから。本当は、そんなモノがなくても最悪を想定できなきゃならないのに、事故がなければナニも・・・」

 「皆まで言うな。バッチリ見えてきたよ。その、ガイアツダノミンのナンたるか、が。そんなビタミンに頼らなくとも、ナニからナニまでシッカリと、考えられる国でなければならないのにな」

(つづく)