はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と六十五
「クウキガ オモイ・・・」
小学生たちの然(サ)りげない一言に、ギクッとすることがある、とAくん。
思いのほか子どもというものは残酷だな、と、思ったことはあったが、ギクッと、となると、どうだろう。毎度のことながら、私の脳内コンピューターの検索エンジンごときでは、ナニもヒットしない。
「小学生の感性、って言えばいいのかな」
か、感性?
「ほ~、そう感じるか~、みたいな」
感性、か~。
「都会での生活が当たり前、に、なっている小学生が、漁村留学をする」
ぎょ、ぎょそん留学!?
「一年間、都会から離れて、自然を身近に感じながら学校生活を送る」
あ~、漁村留学、か~。
「ん~。少なくとも、いい経験にはなるでしょうね」
「なるだろうな。100%、都会しか知りません、という感じの小学生だったから」
「視界がグッと広がって、モノの見え方も変わってきますよね、きっと」
「変わるだろうな。今まで見えなかったモノまで見えてくるかも」
「同じように、感じ方も、感じるモノも、変わってくるかもしれませんね」
するとAくん、突然、「そう、感じ方。ソレだよ、ソレ、ソレなんだよね~」、と。
立て続けに繰り出されるソレソレソレ攻撃に、さすがに心がもっていかれ、またまた、おもわず身を乗り出してしまう、私。
「その、その小学生がポロリと、ポロリと漏らしたわけよ」
ポ、ポロリと漏らした?
さらに一層、身を乗り出す。オマケに耳まで、もう、あのダンボだ。
「都会は、都会は空気が重い、ってね」
「く、く、空気が、重い、ですか」
「そう、空気が重い。誰かの受け売りなんかじゃなく、その小学生自身が、肌で、ホントにそう感じて、そう漏らしたとしたら」
「間違いなく、ギクッとします」
「その、その小学生にとっての都会とはいったいナンなのか。ソコのトコロがズンと気になって、ズズンと重く心配になってきたりもするわけよ」
ん~。
小学生がポロリと漏らした「都会は空気が重い」。私が小学生の時には、そんなコト、微塵も感じなかったし、思いもしなかった。
もしかすると、都会で生きる大人たちの心の疲れが、歪みが、乱れが、そのまま「重たさ」となって、小学生たちにのし掛かってきつつあるのかもしれない。だから・・・。
しかし、万が一にも小学生たちに、そんな空気の重たさなど、ナニがナンでも感じさせてはいけない。ソレは、大人たちに課せられた使命だと、言ってもいい。(つづく)