はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と四十
「タヨウセイ ト コンラン ト ハカイ」
多様性を、「混乱」あるいは「破壊」と捉える人たちがいる、とAくん。そう捉えがちな方々が理想とする、あの頃のあの『古き良き時代』を、未だに追い求めていたりする、という。
「明治維新!」
「め、明治維新!?」
「明治憲法!」
「め、明治憲法!?」
「富国強兵!」
「ふ、富国強兵!?」
「教育勅語!」
「きょ、教育勅語!?」
「ことの外(ホカ)、そのあたりが好きみたいなんだよな」
「で、でも、教育勅語などは、それほど的(マト)が外(ハズ)れているとは、思えないのですが」
あまり深く考えもせず、ソンなコトをペラリと口走ってしまったものだから、当然のごとく、Aくんに、「チッチッチッチッ」っと、即座に反撃の狼煙(ノロシ)を上げる機会を与えてしまう。
「一見、そう見える」
ん?
「でも、でもね。全くもって、子どもたち一人ひとりに目が向いていない」
んん?
「まず、ナニよりも大切なのは、関係性、組織、社会、国。ソレらのために、その構成メンバーとして、子どもたちがいる。だから、仲良く、とか、敬う、とか、従順、とか、貢献、とか、が、大きなウエイトを占めてくる。つまり、つまりだ、一人ひとりのための成長というよりは、むしろ、全体のために、どう、一人ひとりが成長できるか、だな」
ん~。
個、よりも、全体、だということか。
「この、この『古い良き時代』の、トンでもないほどチープな、実に古くさい、カッチンコッチン感爆発のモノの考え方を未だに良しとしてしまう、そんなピーポーたちが数多くいるがゆえに、この国には、そう簡単には『多様性』など根付かない、というわけだ」
全体のための「個」、か~。
だから、全体のためにならない個は、価値がない、生産性がない。みたいな愚かなる発言がアトを絶たないのか。
「ソンなコンなで、多様性は、全体にとって『混乱』であり『破壊』である、と、いうことなんだろうな」
様々な個性のその一つひとつに価値があって、その、一つひとつが胸を張って生きていける社会こそが多様性を認め合う成熟した社会であり、よりパワーに満ちた社会であるはずだ。なのに、ソレを、いとも簡単に否定するものだから、ズルズルと、子どもたちまでもが生きづらい世の中に、成り果てつつあるのかもしれない。(つづく)