ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.901

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と三十二

「ダレガヤッテモ オナジダロ」 

 選挙が万能とは思わないが、選挙のたびに耳にする「誰がやっても同じだろ」という一般ピーポーたちの言葉には、少々違和感がある、とAくん。少なくともトップが代わればナニかが変わる。このことは、ほんの少し世界に目をやるだけで「なるほど」と思えるはずだ。それほど権力というものは、誰が握るかによって、その使われ方が大きく変わる。場合によっては、多くの大切な命が奪われてしまうことだってあるわけだ。そうだろ、違うかい、と、ズンズンとヒートアップしていく。

 Aくんが、あまりにヒートアップするものだから、私までナンだか熱くなって、「私も、選挙が万能だとは思っていません」、と、おもわず宣ってしまう。

 するとAくん、「えっ、そうなの。意外だな~」、と、ナンだか驚いた様子。

 それでもめげることなく私は、更に、「選挙ごときで、世の中が変わるとは、到底思えないのです」、と、追い打ちをかける。

 ここでAくん、腹を決めたのか、その思いを一気に語り始める。

 「たしかに君が言う通り、劇的には変わらない、かもしれない。が、しかし、しかしだ。世の中のために、弱き人々のために、絶対に必要なコトであるにもかかわらず、アチコチから横槍を入れられ、硬直し、ニッチもサッチもいかなくなってしまった法案やら政策やら補償やらといったモノが、トップが代わったことでスルリと認められた、ということもまた、事実としてあるわけだからな~」

 「つまり、誰がやっても同じだろ、ではない。ということですか」

 「そう。誰がやっても全くもって同じ、というわけではない。代わらない、が、硬直を生み、変わらない、に、繋がっていく、ということだ」

 よせばいいのに酔った勢いも手伝って、「でも、代わればいいってものじゃないし、変わることが、必ずしも『善』とも限らない、ですよね」、と、食い下がる。

 「そりゃそうだ。『悪』へと変わっていく、ことも、充分にあり得る」

 「ですから、それなりに上手くいっていると思っているピーポーたちが、無難に現状維持を望むのもまた致し方がないこと、と・・・」

 突然、ソレまでバカみたいに調子に乗って喋り続けていた私のその耳元で、「ソレは違うだろ」、という声が聞こえる。その声は、まさに、もう一人の私の声であったのである。

 そして、そのもう一人の私は、こう続ける。

 「ナニをヤラカしても大した批判もされず、代わらなくても済むんだ、という緊張感の無さが、更なる悪事を生む、というこの歪んだ現実を、君はどう思っているんだい」

 ん~・・・。

 そう、そうだった。緊張感こそが、政治の世界において最も大切なモノなのだ。そのコトを、もう一人の私が、辛抱たまらず、満を持して告げようとしてくれたのだろう。

 代わらないことが、代わらなくても済むことが、緊張感を削いでいく。そして、緊張感が削がれたコトで、その結果として、不誠実を、傲慢を、政治の世界に生み落としていくのだ、ということを、私は、スッカリ忘れてしまっていたようだ。(つづく)