はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と三十一
「コンインハ オフタリサンノ ケンリ!」
「憲法第二十四条!」
「はい?」
「その1項、覚えているかい」
「えっ?」
「とくに今、巷を賑わせている、ほら、あの、日本国憲法第二十四条1項。婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。だよ」
「あ~、思い出しました。個人の尊厳と両性の本質的平等、だったかな~」
「2項ね。結婚やら離婚やら、そして、ソレに絡んだモロモロの法律を制定する際の気構えだな。たしか、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。だったと思う」
制定されなければならない、か~。
「憲法って、絶対にダメなことに対しては、必ずビシッと『ならない』と言い切りますよね」
「その通り。ソコを曖昧にしてしまうと、またまた都合のいいように解釈し出すシモジモじゃないエライ人たちが出てきたりするからな~」
「言い切ったとしても、えっ!?、そういう解釈をしますか、と、いうような、ウルトラCの拡大解釈、時折、耳にしますからね」
「ナゼ、ナゼこの憲法が生まれたのか。憲法のその根っこのトコロに息づく精神、理念、国民が追求していくべき理想。ソコを理解しない限り、枝葉ばかりに目がいくのは必然。言葉じりばかりにロックオンして、都合のいいように解釈する」
「人権や平等や平和を希求するこの憲法が、たとえば、同性愛を、同姓婚を、やみくもに否定することなどあり得ない。と、私も思います」
「そう、あり得ない。この憲法の性分からして、否定するなら『ならない』と言い切っているはずだ。そもそも婚姻なんてものは、当該の、その、対等であるお二人さんの権利なのであって、お二人さん以外のナニモノにも阻害されるものでもジャマされるものでもない、と、憲法第二十四条は、力強くエールを送ってくれているのだ。というのに、とにかく気に入らないんだろうな。都合よく解釈して、ナニがナンでも認めようとしない」
そういえば夫婦別姓も、そして同姓婚も、とにかく気に入らないモノは、ナンでもカンでも憲法を拡大解釈してでも認めない、というその姿勢は、やはり、本末転倒としか、私には思えない。
「法のプロフェッショナルである、であるべき、判事は、裁判に真っ白い状態で臨まなければならないはずでしょ。なのに、ナニやら事前に、色が付いてしまっているように思えて」
「事前に色が付いてしまっている、ね~。なるほど、なるほど。ということは、つまり、憧れの最高裁判事へのその階段を上っていくために、既に、もう、踏み絵を、何枚も何枚も踏まされている、ってコトなのかもな」
ゲッ。
(つづく)