はしご酒(Aくんのアトリエ)、その百と百と六十七
「ヨウカイ マズオキナイノダカラ」
権力者が陥りやすい愚かなる思考の闇の一つが、「そんなコトは、まず、起きないのだから、考えない」だ、とAくん。
あ~、と、またまた珍しく、すぐさま納得してしまう、私。と同時に、条件反射のように頭に浮かぶのは、当然のごとく、あの、原発の事故のコトである。
しかしながら、多くの権力者たちは、そんな過去のコトなどサラリと忘却の彼方に追いやって、アルかナイかワカらないような最悪を、バカみたいに大袈裟に想定した思考など、金(カネ)と時間と労力の無駄以外のナニモノでもないのだ~、と、いった、感じなのである。おそらく、その手の、見事なまでに楽観主義に裏打ちされたコトを、Aくんは、「思考の闇」と言っているのだろう。
「権力を握るシモジモじゃないエライ人たちが、最悪を想定しないというのは、今に始まったコトじゃないですよね」、と私。
「次の選挙で勝たないといけないわけだからな~。目の前の、わかりやすい利益みたいなモノを、実績としてアピールしておかないと勝てない、とでも思っているのだろう」
最悪なんてモノを想定していたら、ナニもできやしないじゃないか、ということなのだろうな、きっと。
「世界が、最悪を想定して動き始めて、初めて、ようやく動き始める、という、この国の、いつものこのレイトスタートスタンス(late start stance)には、本当に呆れ果ててしまいますよね」
「レイトスタートスタンスか~、上手いこと言うね~。ま、この国に限ったことじゃないんだろうけれど。とにかく、ギャンブル好きというかナンというか、最悪なんてナニするものぞ~的な、そんな姿勢が、なぜか支持されがちなんだよな~」
支持されがち、か~。
もちろん、それじゃダメだろ、という、一般ピーポーたちの怒りも、憤りも、あるにはあるのだけれど、残念ながら、ノド元過ぎたあたりから薄まって、キレイさっぱり忘れ去らるのがこの世の習い、という思いが、私の中にもある。
そんなこんなで、この、妖怪マズオキナイノダカラ。も、また、呑気な楽観主義者たちの圧倒的な支持を得て、今日も今日とて、そんな権力者たちの耳元で、「マズオキナイノダカラヤリスゴセ~マズオキナイノダカラヤリスゴセ~」と囁きながら、強(シタタ)かに、その存在感を示しまくっている、らしい。(つづく)