ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.876

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と七

「テストステロン!」

 「戦いに勝つことで分泌されるホルモン、テストステロン。コイツがライオンの鬣(タテガミ)を濃く黒くすることで、オスはメスにモテモテになる、と、ある番組で、オカッパ頭の5才の女の子が自慢げに宣っていたわけよ」、とAくん。

 その、オカッパ頭の5才の才女のことも気にはなるが、それ以上に、その、怪しげな名称のテストステロンのことが気になってしまう。

 「テ、テストステロン、ですか」

 「そう、テストステロン。ウルトラマンかナニかに登場する極悪宇宙人みたいだろ」

 極悪宇宙人が勝者に放つホルモンビームが、鬣(タテガミ)を濃く黒くする、か~。

 ん!?

 ということは、戦わなくなると、鬣(タテガミ)は薄く白くなる、のだろうか。

 あっ!

 だ、だから、年を取り、一線を退いたあたりから、私たちの髪は薄く白くなるわけか。

 「たとえば、たとえばですよ。私たちも引退したりしてしまうと、ライオンと同じようなことになる、ということですか」

 「モテたいのなら戦いの場から身を引くな、引退なんてトンでもない、あの世からお迎えが来るまで働け働け~、ってことなのかもな」

 恐るべし、テストステロン。

 ひょっとしたら、「モテたい」という人の心を巧みに利用して、トコトン働かせて人類を、クタクタに、ヘロヘロに、ボロボロに、してしまおうとする狡猾(コウカツ)な極悪宇宙人たちの陰謀なのかもしれない、な。(つづく)