はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と七
「テストステロン!」
「戦いに勝つことで分泌されるホルモン、テストステロン。コイツがライオンの鬣(タテガミ)を濃く黒くすることで、オスはメスにモテモテになる、と、ある番組で、オカッパ頭の5才の女の子が自慢げに宣っていたわけよ」、とAくん。
その、オカッパ頭の5才の才女のことも気にはなるが、それ以上に、その、怪しげな名称のテストステロンのことが気になってしまう。
「テ、テストステロン、ですか」
「そう、テストステロン。ウルトラマンかナニかに登場する極悪宇宙人みたいだろ」
極悪宇宙人が勝者に放つホルモンビームが、鬣(タテガミ)を濃く黒くする、か~。
ん!?
ということは、戦わなくなると、鬣(タテガミ)は薄く白くなる、のだろうか。
あっ!
だ、だから、年を取り、一線を退いたあたりから、私たちの髪は薄く白くなるわけか。
「たとえば、たとえばですよ。私たちも引退したりしてしまうと、ライオンと同じようなことになる、ということですか」
「モテたいのなら戦いの場から身を引くな、引退なんてトンでもない、あの世からお迎えが来るまで働け働け~、ってことなのかもな」
恐るべし、テストステロン。
ひょっとしたら、「モテたい」という人の心を巧みに利用して、トコトン働かせて人類を、クタクタに、ヘロヘロに、ボロボロに、してしまおうとする狡猾(コウカツ)な極悪宇宙人たちの陰謀なのかもしれない、な。(つづく)