ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.866

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と九十七

「スベテ ジンルイノ セイ?」

 プクプクと、プクプクと、ある思いが膨らんでくる。

 ひょっとしたら、大地震と、巨大隕石の地球激突と、極悪ウイルスと、という、この星屈指の最強disaster(災害)トリオ以外は、全て、人類のせいなのかもしれない。

 その、膨れ上がる思いを、そのままAくんにぶつけてみる。

 「権力者に限ったことではなくて、人類のせい、なのではないですか」

 「人類の、せい?」

 「考えてみてくださいよ。仮に人類が、この星に誕生していなかったとしたら」

 「僕たちが、いなかったとしたら?」

 「おそらく、今、そこかしこでブチュブチュと湧き起こっているモロモロのこの星の問題たちは、あたかも、そんなモノ、ハナからなかったモノ、で、あるかのように、綺麗サッパリ消えてなくなるのではないか、と、思えてならないのです」

 ん~。

 そう唸りつつ、Aくん、豆アジの南蛮漬けを一口。の、そのあとを、大急ぎで追い掛けるようにして、ヌルくなったしまった淡路島のプチプチをグビリとやる。

 そして、こう返してくる。

 「君の言う通り、全て、人類の『業(ゴウ)』、その業の深さ、ゆえ、ってコトなのかもな」

 「ごう?。ごう、業、業の深さ、ですか」

 「そう、業。歪んだ権力者を誕生させるのもまた人類の『業』。そうした人類のあらゆる業が、その業の深さが、結果として、この星を痛め付けている、と、僕も思うよ」

 人類の業が、その業の深さが、この星を痛め付けている、か~。

 「ただし、人類のその存在の醍醐味は、イイもワルイも、ナンやカンやも、グチャグチャッと手当たり次第に煮込んだようなトコロにある。とも、僕は思っている」

 ん?

 「もちろん、それゆえの、数多のトンでもない悲劇に見舞われ、理不尽にも、多くの罪なき弱者たちが苦しめられ、命を奪われてきたのもまた事実。それでも人類は、必ず、真っ当な愛と正義と英知とを結集して乗り越えていく。というか、その、乗り越えていこうとするプロセスこそが大事で、きっと、いつか、人類を目覚めさせ、更にグレードアップさせていくのだ、と、ナニがナンでも思いたいし、そう、信じたい」

 ナニがナンでも、そう、信じたい、か~。

 Aくんにしては、いつものAくんらしくない、違和感も弱腰感もあるモノ言いのように思える。が、それほどまでに、もう、この星は、そう思うしかない、そう信じるしかない、というトコロまできてしまっている、ということなのだろうか。(つづく)