はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と六十九
「ハイエナ ト ライオン ト オモイコミ ト」
ライオンの食べ残しを期待するかのように、ソレを、遠巻きにジ~ッと眺めているハイエナたち。この様子を人間たちに見られてしまったことで、このあと、ハイエナたちの運命は大きく変わってしまうのである。
「ハイエナ。お好きですか」
ハ、ハイエナ、だって~!?
まさにそんな表情の、Aくん。
「君って、ハイエナみたいだね。やった~、ありがとう、嬉しいわ。なんてことには絶対にならないだろ、普通、違うかい」
違わない。普通、ならない。
Aくんのおっしゃる通りなのである。
すでに、ハイエナとライオンの間には、いかんともし難いヒエラルキーが、完全に出来上がってしまっている。もちろん、そのトップクラスにライオンが鎮座し、遥か下方で、ハイエナたちがタラタラタラタラと屯(タムロ)する。
「ライオンが食べ残した獲物の肉を、ハイエナたちが貪(ムサボ)り喰う、みたいな、そんな光景、見たことありますよね」
「あるある、大ありだ。その光景こそがハイエナのイメージそのものだと言ってもいい」
「もしも、もしもですよ。ライオンが、ムシャムシャとエラそうに食べていたその獲物を、最初に仕留めたのは、実は、ライオンじゃなかったとしたら、どうです?」
えええええ~っ!?
まさにそんな表情の、Aくん。
「ま、まさか、ライオンが、ハイエナの獲物を横取りしたということかい」
「全てが全て、そうじゃないとは思いますけど、そうみたいですよ」
「ナ、ナンだよソレ。コラ!、ライオン、横取りすんじゃね~よ。って、話だよな~」
「このコトは、ハイエナとライオンに限ったコトではないように思えるのです」
んんんんん~っ!?
まさにそんな表情の、Aくん。
「つまり、ナニも知らないにもかかわらず、ハイエナをそういう目で見てしまうように、この人間社会においても、その過去も、歴史もナニもカも知らないにもかかわらず、ある人の、あるモノの、あるコトの、その、その上っ面(ツラ)だけで、軽率に、ドウのコウのと思い込む、アレやコレやと判断する、そして、随分とエラそうに断定的に言い放つ、言い放ってしまう、というこの感じ。結構、まだまだソコかしこで見掛けたりしませんか」
「あるかもな~。いや、ある、あるな。まちがいなく、ある」
(つづく)