はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十六
「ショクザイ ドウグ ギリョウ」
あっ!
その、関西訛りのプロ職人さんの話題から、私も、つい最近見た、あるTV番組のことを思い出す。
包丁研ぎ屋さん。
ある町の、その、スタイリッシュな包丁研ぎ屋さんの、ある言葉に、並々ならぬ包丁に対する愛の深さを感じたことを、今、思い出したのである。
「三位一体の大切さ!、だと、思うのです」
Aくんのマネというわけでもないのだけれど、一切の前置きなしに、思いっ切り唐突に、そう口火を切ってみる。
「三位一体?」
さすがに、本家唐突感丸出しのAくんも、私の分家唐突感に、「なぬっ!?」、という表情。
そんなAくんを尻目に、その時感じた思いを、一気に熱く語る、私。
「研ぎ澄まされたそれぞれが折り重なった時、初めて、その相乗効果から、元の何倍ものブラボーな結果を生むことができる。コレって、こんな、閉塞感に満ち満ちた時代だからこそ、社会だからこそ、余計、とても大切なコトのように思えるのです」
するとAくん、「まさに、コラボレーション、だな」、と。
「それ、それです。そう、コラボレーション。それぞれがバラバラに頑張っていたって、どうしても限界がある。業種やらナンやらカンやらの壁をヒラリと飛び越えて、巻き込んで、繋がっていってこそ、未来が拓かれるのではないか。とくに、地方において、そう、強く感じるのです」
「なぬっ」から「お~」に表情を変えつつ、Aくん、「話が大きくなってきたな~」、と。
そこで、満を持して、ついに、いよいよ、その包丁研ぎ屋さんのあの言葉を、発表する。
「食材、道具、技量!」
「しょくざい、どうぐ、ぎりょう?」
「そうです、食材、道具、技量。包丁愛がハンパない、ある包丁研ぎ屋さんが、ふと漏らした言葉です」
「お~。それが、三位一体か」
「ソコに、本当の意味での地方創生の、大いなるヒントがあるような気がしてならないのです」
「その三位一体。農、工、人、とも、置き換えられそうだし、それ以外にも枠を越えてドンドンと広がっていきそうな気もするし。となると、たしかに、元の何倍もブラボーな結果を生むことができる、地方の未来を切り拓く言葉のような気は、するよな」
(つづく)