ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.271

はしご酒(4軒目) その二十二

「シンガタレッカーマン タンジョウ!」①

 あの、アホがアホ呼ぶアホアホワールドの住人に、「レッカーマン」、が、いる。

 隣で、先ほど注文したらしい奄美大島黒糖焼酎を、ロックでチビチビやっているAくんが、命名したものである。おそらく、上空ばかりに目を向けて、媚びへつらい、忖度し続けているうちに、本人も気づかぬまに劣化し、立派なレッカーマンに成長してしまった一部のシモジモじゃないエライ人たちに対する総称なのであろう、と、なんとなく認識はしている。認識はしているのだけれど、なぜか、本当のところはどうなんだろう、と、気になり始めた私は、おもわず、そのレッカーマンの生みの親、命名者、に、問うてみる。

 「人が劣化するときの、最たる要因、って、なんだと思います?」

 「唐突に、難しいことを聞いてくるよな~」、とAくん。

 心の中で、「唐突に、って、元祖唐突感のAくんには言われたくないぜ」、などと、一応、人知れず、強気に文句は言ってはみたものの、やはり、たしかに、唐突感は歪めない。

 「レッカーマンになるための必要十分条件か~」と独りごちながら、暫し考え込むAくん。

 その間に、女将さんに、なにか冷酒でお願いできますか、と声を掛けてみる。

 すると、おもむろに女将さんは、冷蔵庫から静かに一升瓶を取り出して、下から三分の一ほどが美しく白濁しているその酒の上澄みを、丁寧に、トクトクトクと、形のいい小振りのグラスに注いでくれたのである。(つづく)