ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.822

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十三

ルサンチマン!」

 「ニタニタ笑って、ナニを考えているんだい」

 私が、バカみたいにアレコレと、義経に対する書き込みを妄想していたら、おもわずAくんに、そう突っ込まれてしまい、少々、慌てる。

 「ニタニタなんてしていませんけど」

 「え~、そうかい?。ニタニタしているようにしか見えなかったけど」

 とにかく話を変えなきゃ、と、突発的に、ナゼか「ルサンチマン!」と口走ってしまう。

 「ル、ルサンチマン?」

 「いえ、いや、べつに。つい最近耳にして、ちょっと気になった言葉だったので」

 「なんだよ、それ。気になるな~」

 「判官贔屓(ホウガンビイキ)。その判官贔屓を、ほんの少しだけ視点を変えて見てみると、ルサンチマンが見えてくる、みたいな」、と、慌てついでに、適当に(でもないのだけれど)、思い付いたままその説明を試みてはみたけれど、当然のごとく、そんな説明でAくんが納得するわけもなく、すぐさま、「申し訳ないが意味不明。全くわからない。もっとわかるように説明してくれよ」、と、見事なまでのカウンターパンチを喰らう。

 ダメだ、どうしよう。説明なんてできるわけがない。

 それでも、ベストは尽くしてみようと、当たって砕け散る覚悟で、さらに、説明し続けてみようとする、私。

 「圧倒的弱者の思いに寄り添う、見守る、応援する、と、圧倒的強者に嫉妬する、憤る、憎悪する、とは、違いますよね」

 妙に真剣な表情のAくん。

 ナゼか、私の、苦し紛れと火事場の糞(クソ)ヂカラとの合体版のような話に、集中して、耳を傾けてくれている。

 「ソレが、ルサンチマン。なんとなく似てはいるけれど、どうしても、判官贔屓にはない危険な臭いを感じてしまうのです」

 「つまり、君は、圧倒的な強者に対する攻撃的な姿勢は危険だ、と、言うわけだな」

 ま、まずい。微妙に違う。 

 そんなコトが言いたいわけではない。ソレでは、「長いモノには巻かれろ」と、おそらく、ナニも、かわらない。

 「ではなくて、そうした負のエネルギーは、良からぬ方向に人を突き動かしかねない、ということです」

 するとAくん、「ん~」と唸ると、そのまま黙りこくってしまった。

 だから、私も、一緒に黙りこくってみよう。とは、思わず、とにかく、私の考えを、思いを、どうにかして伝えようと、いま一度、試みる。

 「相手が強者だからといって、ナンでもカンでも噛み付けばいいってものではないのではないか。むしろ、大切なことは、まず、弱者の思いに寄り添い、応援する、という、正のエネルギーを、思いっ切り自分の中に溜め込むことだと思うのです」

 すると、ようやくAくん、自分なりにルサンチマンのナニかが見えてきたのか、ユルリと語り出す。

 「たしかに、どんな的外れなチャンスであっても、とにかくチャンスでさえあれば噛み付くために噛み付く。みたいな、そんな脊髄反射的な噛み付き攻撃を、しばしば目にすることはある。SNSでも、応援よりも攻撃、が、やたらと目に付く。ま、おそらく、一つの戦略なんだろうけれど、でも、あらためて考えてみると、そういうのって、全て、まさにその負のエナルギーってヤツの仕業のような気もしてくるよな」

(つづく)