ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.821

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十二

「ホウガンビイキ!」

 イロイロなモノが絶滅危惧種化しているこの国、この星、だけれど、その中の一つに、「判官贔屓(ホウガンビイキ)」がある、とAくん。

 「ほ、判官贔屓、ですか」

 「その、ブッチギリの代表格が、義経、あの、源義経、だな」

 「鵯越(ヒヨドリゴエ)の逆落としの、義経ですね」

 「一ノ谷の戦いね。でも、どちらかというと、武蔵坊弁慶やら富樫左衛門やらと絡みに絡む『勧進帳(カンジンチョウ)』のほうが、判官贔屓を語るには適しているかもしれない」

 「あ~。歌舞伎で見たことがあります。見る人のほぼ全員が、チーム義経をドキドキしながら見守る、応援する、みたいな、そんな感じですよね」

 「圧倒的に弱く不利な立場に置かれたモノ、コト、を、応援するという、この心情が、なぜか、いつのまにか絶滅危惧種化してしまっている、ということだ」

 あらためて、そう言われると、なるほど、たしかに、勧善懲悪やら判官贔屓やらといった、ある意味、この国の伝統的な心情だと思われていたものが、知らぬ間に消えて無くなりつつあるような気がしてくる。

 仮に、今、義経に纏(マツ)わる様々な事件が起こったとしよう。ひょっとしたら、SNSに、こんなコトが書き込まれたりするかもしれない。

 義経、卑怯者。

 背後から狙うって、性格ヤバすぎ。

 義経、ワンマンプレー。

 目立ちすぎ。そりゃ、頼朝もキレるわ。

 自業自得。

 頼朝さんは頑張ってはる~。

 頼朝さん、カッコいい~。

(つづく)