はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と五十二
「ホウガンビイキ!」
イロイロなモノが絶滅危惧種化しているこの国、この星、だけれど、その中の一つに、「判官贔屓(ホウガンビイキ)」がある、とAくん。
「ほ、判官贔屓、ですか」
「一ノ谷の戦いね。でも、どちらかというと、武蔵坊弁慶やら富樫左衛門やらと絡みに絡む『勧進帳(カンジンチョウ)』のほうが、判官贔屓を語るには適しているかもしれない」
「あ~。歌舞伎で見たことがあります。見る人のほぼ全員が、チーム義経をドキドキしながら見守る、応援する、みたいな、そんな感じですよね」
「圧倒的に弱く不利な立場に置かれたモノ、コト、を、応援するという、この心情が、なぜか、いつのまにか絶滅危惧種化してしまっている、ということだ」
あらためて、そう言われると、なるほど、たしかに、勧善懲悪やら判官贔屓やらといった、ある意味、この国の伝統的な心情だと思われていたものが、知らぬ間に消えて無くなりつつあるような気がしてくる。
仮に、今、義経に纏(マツ)わる様々な事件が起こったとしよう。ひょっとしたら、SNSに、こんなコトが書き込まれたりするかもしれない。
義経、卑怯者。
背後から狙うって、性格ヤバすぎ。
義経、ワンマンプレー。
目立ちすぎ。そりゃ、頼朝もキレるわ。
自業自得。
頼朝さんは頑張ってはる~。
頼朝さん、カッコいい~。
(つづく)