はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五十六
「グロウバリズム」
バリバリに愚弄(グロウ)されたグローバリズムを、Aくんは、吐き捨てるように「グロ、ウ、バリズム」と呼ぶ。
グローバリズムに限ったことではないが、ソレが、どれほど立派なモノであったとしても、その崇高なコンセプトを、皆でよってたかって愚弄してしまえば、たかだか「ー(ヨコボウ)」が「ウ」になっただけだろ、と、軽くあしらうわけにはいかなくなるほどの悪しき変異型に様変わりする、と、熱く語り続けるAくんからは、失意とも憤りとも受け取れるオーラが、辺り構わずジリジリと放たれ続けている。
「そもそもその、ヨコボウの方のグローバリズム、自体、一体、ナンなのですか」、と私。
「そもそもその、ね~。・・・、そもそもその、の、ソレ自体、ソレほどいい言葉だとは思っていないんだよな、僕は」
少し意外に思える。
「国境を取っ払う、というイメージがありますが、それでも良くないと」
「そう、それでも良くない。なぜなら、国境を越えた搾取(サクシュ)の臭いが、金儲けの臭いが、プンプンとするからだ」
「ウ」に変異するその前から、そもそもが胡散臭いのだ、ということを、Aくんは言おうとしているのだろうか。
「そもそも、変異し易い性質をもっている、と言ったほうが、いいかな」
「そもそも、変異し易い性質、ですか」
「そう。だから、それゆえに、よほどの気概と覚悟を、もって臨まなければ、いとも簡単に悪しき変異を遂げてしまう、ということだ」
ひょっとすると、コレもまた、原発などと同様に、そもそもが、人類ごときでは、到底、取り扱うことなどできない、てきっこない、そんなモノなのかもしれない。(つづく)