ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.714

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五十五

「パン ト サーカス」②

 「まさに、パンとサーカス、ってヤツだ」

 「パ、パンとサーカス、ですか」

 残念ながら、ナンのことやらサッパリ意味不明だ。

 「食糧と娯楽を与えてさえおけば、民衆なんてものはどうにでもなる、チョロい!、という、古代ローマの統治術だ」

 なんとなくムカつく。

 「この統治術、誰がナンと言おうがとにかく酷(ヒド)い、酷すぎる。でもね、コレって古代ローマに限ったことじゃ、ない」

 限ったことじゃ、ない?

 「そう、限ったことじゃ、ない。ほんの少しでいい、ほんの少しでいいから周りを見渡してごらんよ。現代社会においてもこの古典的な統治術は、消えてなくなるどころか、まだまだバリバリに健在なのだから」

 まだ掴み切れない。

 なんとなく、ボンヤリとわかったような気もするが、でも、その、パンとサーカスが、若者たちのその頑張りにどうリンクするのか、が、全くもってピンとこない。

 「怪しげな落とし穴のその底で、そのパンとサーカスが、姑息なナニかを企(タクラ)んでいる、ということですか」

 「いや、その、パンとサーカスが、ではなくて、その、パンとサーカスを、悪用しようとするシモジモじゃないエライ人たちが姑息だ、ということだ」

 キラキラと輝ける若者たちの頑張りを、悪用、とは。

 「つまり、未解決のトンでもないコトを捨て置いて、その、眩(マバユ)いばかりの輝きで民衆の目を眩(クラ)まし、その、美しき汗で煙に巻く、という統治術だな」

 なるほど、なるほどそういうことか。

 とにかく民衆は、ナニごとにも騙されることなく、振り回されることもなく、権力を握るシモジモじゃないエライ人たちよりも、一枚も二枚も上手であれ、ということなのだろう。(つづく)