ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.535

はしご酒(4軒目) その百と百と七十六

「ブ~フ~ウ~ ハ ク~フ~ウ~」

 ♪ブ~フ~ウ~、ブ~フ~ウ~、いっさんびきの~、こ、ぶ、た~

 あの、ドラえもんやら窓ぎわのトットちゃんやらが、その、声を担当した、伝説のTV着ぐるみ人形劇『ブーフーウー』の主題歌なんだ、と、実に嬉しそうに口ずさみながら語り始めたAくん。もちろん、なんのことやら、サッパリわからない。

 「さんびきのこぶた、知らない?」

 「知りません。ん?、三匹の子豚?、子豚の兄弟と狼との攻防を描いた、あの絵本のことですか」

 「あ~、それそれ。それからの、TV着ぐるみ人形劇ね。MCのおネエさんが、カバンから子豚の小さな人形を取り出すところから始まるオープニングも秀逸で、子ども心を擽(クスグ)りまくっていたな~」

 「その人形が動き出すんですか」

 「その人形が、腕人形、いわゆる操り人形ね、に、入れ替わり、更には、着ぐるみへと切り替わる、というソコのところが、あまりにもスムーズだったものだから、おそらく、あの頃のTVの前の良い子たちは、ほぼ全員、そのトリックに気付いていなかったと思う」

 「なんか、ものすごくハイスペックな人形劇だったんですね」

 Aくん絶賛の、その、着ぐるみ人形劇。当時のTV局の英知と気概とが、ギュギュギュギュギュッと結集したものであったのだろう。

 「工夫なんだよ、工夫。禅宗の教えの中にも登場する、この、工夫、この工夫こそが、トンでもないことに見舞われたときにも、大いなるパワーを発揮する、と思うんだよな」、と、かなりの自信を漂わせながら、Aくん。

 「工夫、ですか」

 「もちろん、正攻法の工夫ね」

 「正攻法、の、工夫ですか」

 「そう。ヤヤもすると、人は、どうしても邪道な工夫に走りがち、だからな」

 なるほど、たしかに、とくに、トンでもないことに見舞われたときの、その、悪魔の囁き、に、抗(アラガ)えない、魂を奪われる、という、そのあたりの邪道具合、わからなくはない。

 するとAくん、揺れるハートを、落ち込むハートを、奮い立たせる応援歌のように、少し恥ずかしくなるぐらいの大きめのボリュームで突然、歌い出す。

 ♪ク~フ~ウ~、ク~フ~ウ~、せいこっほ~の、ク、フ、ウ~

(つづく)