はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五十
「フヌケ ナ フワライドウ」
「付和雷同(フワライドウ)」という四文字熟語をご存じか、とAくん。
付和雷同、か~。
「我々の考えや行動って、ずっとそのまま同じなのではなくて、ズルリズルリと変化していきがちだろ」
「変化していきがち、ですね。そう思います。その変化のプラス側にあるのが『臨機応変』で、マイナス側にあるのが『付和雷同』、みたいな、そんなイメージです」
Aくんの 顔一面が 「おっ」まみれ
心の中で、ほぼ無意識に、バカみたいな一句を詠んでしまって、おもわず苦笑する。
「おっ、おっ、おっ、お~っ。それ、上手いね~、上手いよ。かなりドンピシャの説明かも」
「そ、そうですか」
なんとなく少し嬉しくなる。
「とはいえ、学期末テストかナンかに『付和雷同を説明しなさい』なんて問題が出題されたとしたら、どうだろうな~。君のその解答に、粋な先生なら、いいね、って、褒めてくれそうだけれど」
「いいです、不正解で」
「でだ、ナニが言いたいかというと」
とてつもなく長い前振りから、ようやく本題に入る、Aくん。
「ナニをするにしても重要なのは、ソコに堅牢なコンセプトがあるか、どうか、ということ」
「堅牢な、コンセプト、ですか」
「そう、堅牢。しかも、柔軟性も兼ね備えた堅牢でなきゃダメなんだ。柔軟性と堅牢、その二つがあって初めて、付和雷同から脱却できる、と、僕は思っている」
周りを見渡してみる。
ナニかがあるたびに、ナニかを言われるたびに、軽く(としか思えない)、適当に(にしか見えない)、コロコロと考えを、言動を、態度を、変える、では、ナニを、ダレを、信じていいのか、全くもってわからなくなる。
「つまりだ、たとえば、仮に、どんなにお金や労力や時間をかけたモンスター級のイベントであったとしても、ソコから、スポンと、強い思い入れと、そして真っ当なコンセプトとが抜け落ちてしまっているとするならば、そんなもの、文字通り『腑(フ)抜け』以外のナニものでもない、ということだ」
(つづく)