ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.655

はしご酒(Aくんのアトリエ) その九十六

「カンジョウテキ!」②

 「そうかもしれません、と、返してきたわけよ、彼女が」

 「女性なのですか」

 「そう、女性。その女性のその言葉にカチンときた僕は、あろうことか、やってられるかよ!、と、声を荒げてしまった」

 「で、その女性は?」

 「実にクールに冷静に、こう言ってのけた。恫喝して自分の意見を通そうとする、って、いかがなものかしら、ってね」

 まさに大人と子ども、そのときの様子が目に見えるようだ。Aくんともあろうものが、そのような愚かなるミステイクを犯してしまうとは。

 「勝ち負けじゃないけれど、完敗だよ、完敗」

 「で、でも、そうかもしれません、の、その、彼女側にも、反省すべき点がないわけじゃない、という気もするし、当然、ソコから一気に、起死回生の捲土重来を期したわけでしょ」

 「しないしない、すぐさま謝ったよ、申し訳ない、と」

 万事休す、か~。

 「でも、そんなことはこの際どうでもよくて、ナニが言いたいか、というとね、この、感情的になる、ということの、その是非についてなんだ」

 感情的になることの、是非?

 さらにグググッと身を乗り出す。

 「圧倒的に悪玉役である『感情的になる』。あの、メラビアンの『目は口ほどにモノを言う』理論でも、チラリと指し示されているように、いくらイイことを言っていたとしても、感情的になってしまった、ということで、そんな言葉の全てが吹っ飛んでしまう、その、不利の塊(カタマり)のような『感情的になる』、を、ナニがナンでも避けて、意地でも感情を押し殺し、とにかく常に冷静に、無難に淡々に、ということの、ソコに潜む弱点ってモノもあるんじゃないか、ってね」

 ソコに潜む弱点、か~。

 到底、言い訳とは思えないAくんの熱き語りから、たしかにジンワリと伝わってくるものはある。

 「メッセージを伝える力。悪玉役とか善玉役とかではなくて、その一点から見てみただけでも、見えてくるだろう、その弱点が。見えてこないかな~、こないか~・・・・・・」

 熱き語りも、徐々に、ブツブツブツブツの様相を呈し始めて、そのままAくん、またまた奥へと姿を消す。(つづく)