ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.710

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五十一

「ビビルマン!」①

 輪島市が生んだ天才漫画家、永井豪。数年前に七尾駅で、たまたま見掛けた赤やら青やらを基調にしたカラフルな車体が、『マジンガーZ』や『キューティーハニー』たちで、キラキラとラッピングされていたことを思い出す、とAくん。

 さらに、あくまで個人的な意見だけれど、と、前置きした上で、Aくん、永井豪作品の中の屈指の二大巨頭を、実に嬉しそうに発表してみせる。

 「まず、『けっこう仮面』ね。良い子のエロス心を健康的に擽(クスグ)る名作。そして、永井豪ワールドの金字塔、『デビルマン』。残念ながらTVアニメの方は、その貴重な毒気が抜かれてしまっていたけれど」

 その毒気が抜かれたTVアニメの『デビルマン』なら知っている。

 「かなり面白かったと思いますけど」

 「いやいや、原作はあんなもんじゃない。その数倍は面白いから、是非読んでみてよ」

 Aくんがそこまで言うのだからそうなのだろう。思いっ切り興味が膨らんでくる。

 「そんなデビルマンなのだけれど、その遠い親戚筋にあたる、と、一部で囁かれている『ビビルマン』は、デビルマンと違って、悲しくなるほどナニかに怯え、ナニかに媚び諂(ヘツラ)い、そして、目一杯疲弊しながら生きていく、というわけだ」

 「ビ、ビビルマン、ですか」

 「そう、ビビルマン。なぜか、ありとあらゆる分野の組織の中で、ジワリジワリと増殖中だというから、驚きもするし、心配にもなる」

(つづく)