はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と五十四
「パン ト サーカス」①
世の中がダークに煮詰まってきた時に、スポーツやらナンやらでの理屈抜きの若き頑張りが、つかの間でも重く暗い現実を忘れさせてくれる、ということがある、とAくん。
そのことで元気付けられたり、勇気をもらったりするのだから、文句など付けようがない、と言い添える。
「有り余る若者たちのエナジーのお裾分け、みたいな、そんなイメージですよね」
「そうそう、それだよ、それそれ、お裾分け、お裾分け。上手いこと言うよな~」
少し、照れてしまう。
「よし、僕も私も、そんな若者たちを見習って、負けずに頑張ろう、って思うわけよ、その時は。ま、そう簡単には同じように頑張れなくて、アッという間に挫折してしまうのだけれど」
Aくんが、なぜか珍しく、あまりにも、丸ごと好意的に受け止めた発言をするものだから、だんだんと、その裏にナニかがあるに違いない、と邪推し始める、私。
「でも、もちろん、ソコには、怪しげな落とし穴が、ポッカリとあったりするんですよね」
一瞬、鋭い!、という表情を見せたAくん、キラキラと輝ける若者たちのその背後から、ヒタヒタと迫り来る悪臭漂う闇、に、ついて、ユルリユルリと語り始める。(つづく)