ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.707

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と四十八

「ダレニトッテノ ナンノタメノ ナニヲマモルタメノ」

 法は順守されなければならない。

 突然、そんなことを言い出したものだから、おもわずAくんの顔を覗き込む。

 いたって真面目な顔つき。ココは、真面目に返さねば、と、私なりの考えをキチンと述べる。

 「でも、非の打ち所のない真っ当な法は別として、この世には、結構、悪法もあったりするわけですから、どちらかというと、順守というよりは、むしろ、致し方なし、と言ったほうが、私の場合は近い気がします」

 するとAくん、いかにも、ソレだよ、ソレ、という表情を浮かべながら、ソレについて語り出す。

 「つまり、どんな法であろうとも、法は順守してもらわないと困る、というわけだ。わかるかい、この違いが」

 一気に、義務から命令へ、テイストの変容だ。

 「似てはいますが、後者は、上から押さえつけられている、という感じが歪めないですよね」

 「そうなんだ、そうなんだよ。だから、権力を握るシモジモじゃないエライ人たちってのは、どうしても、豪腕にモノを言わせて、法を変えたがる、法をつくりたがる」

 それなりに納得はできるものの、法を十把一絡(ジッパヒトカラ)げにして、というのには、どうしても、まだ少し違和感がある。

 「でも、必要な法は必要ですよね」

 「必要な法、ね~。君が言う、その、必要な法ってヤツの大事なポイントは、ダレにとっての、ナンのための、ナニを守るための、必要な法なのか、というその一点に尽きると思うんだよな」

 結局、いつもながらいつだって、この手の問題は全て、「人」次第、ということになってしまう。(つづく)