はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と四十七
「ナニガワルイ ドコガワルイ」②
「他にどう考えられるんだよ、って話だけどな~」
チッチッチッチッチッ、と、まるでメトロノームと同じように、人差し指を、目の前で左右に振りながら、待ってましたとばかりに、私。
「たとえば、なぜ、あんな酒癖の悪い客に酒を提供するんだよ。とか、なぜ、注意するなり退店してもらうなりってことができないんだよ。とか、挙げ句の果てには、酒って罪だよな。とか、といった具合に、逆恨みされると厄介なその酒癖の悪い客にではなく、大抵は、言われっ放しの店側や、ナニ一つ文句を言わない酒たちに、ロックオンして、ソコに思いっ切り批判の矛先を向ける」
「さ、酒にまで、批判の矛先を向けるとはな~」、と、かなり呆れ顔のAくん。
「店側に罪はない。ましてや、酒たちに罪などあろうはずがない。にもかかわらず、ヤヤもするとアッサリと、ソンなことになってしまったりするからこそ、あらためて、問題視すべきは一人ひとりのマナーでしょ、マナーパワーでしょ、そうでなければ、酒たちがあまりにも可哀想でしょ。という、そんな、話なのです」
(つづく)