はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と三十四
「ノドモトスギレバ~ ナ レバー ト スパイス」①
もともとは、レバーと言えば鶏肉、鶏肉のレバー以外はレバーにあらず、などと、頑(カタク)なに言い続けていたのだけれど、ある友人が、レバーはやっぱり豚でしょ、と、あまりにもしつこく宣うものだから、なんとなくズルズルと、レバーは豚、みたいなことになってしまったんだよな、とAくん。
そして、そんな豚レバーにはスパイスが欠かせない、と、力強く言い添える。
「実は、私も、一度だけ、豚レバーの煮込みに挑戦したことがあります」
「おっ、いいね~」
「でも、美味しくなかった」
「愛情不足?」
「愛情ですか?、注ぎましたよ、イヤというほど」
「でも、やっぱりマズかった」
「はい。二度とつくるまい、と、決意も新たにするほどのマズさでした。そのとき思ったんです。ひょっとしたら、スパイスのせいじゃないか、ってね」
「その通り!。その気付きが、豚レバー道を極めることに繋がる、繋げてくれる、はずだ」
「豚レバー道、ですか」
「そう、豚レバー道。茶道に和菓子が欠かせないように、豚レバーにはスパイスが欠かせない」
分かるような分からないような、そんな例えではあるけれど、豚レバー道にスパイスは欠かせない、ということだけは、以前にも増して腑に落ちる。(つづく)